著者
高井 直樹
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

シアノバクテリアの概日時計は KaiA, KaiB, KaiC を用いて試験管内で再構成できる.中でも KaiC の ATPase 活性は概日リズムの周期を規定しており,温度補償されている.本研究では KaiC の ATPase 活性が広い温度レンジの下でも安定的にリズムを生み出すメカニズムを明らかにするため,温度ジャンプ時の ATPase 活性の挙動を調べると共に,概日リズム異常型のKaiC 蛋白質を精製し,野生型 KaiC 蛋白質との挙動の差異を生化学的に解析した.その結果,温度ジャンプ時の ATPase 活性は一過的に上昇するが,即座に抑制される過渡応答が見られた.また,温度補償異常型では過渡応答が見られなかったことから,KaiC は ATPase 活性を用いた分子内フィードバックにより,周期の温度補償性を獲得し,その機能には C2 ドメインが重要な働きを担うと考えられた.