著者
高原 耕平
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.23-33, 2021 (Released:2022-07-20)
参考文献数
36

減災の実践や研究は生活を構成する多様な価値や意味に対して摩擦を生じうる。たとえば高齢者が避難訓練への参加を「(災害が起きたら)もう死ぬからいい」と拒むといった例がある。死生観、自然観、公共性、宗教性といった諸価値と「減災」が調停されないままであれば、減災が社会と生活に本当の意味で息づくことが妨げられてしまう。わたしたちが取り組んでいることの意味を解釈するために、減災と社会の関係を生活と身体の次元にまで降りて捉え返す必要がある。そこで本稿では、減災・防災に関する様々な技術や制度が有機的につながり、そこに生きる人々の生活や姿勢に影響を与えながら、みずから発展してゆく社会を「減災システム社会」と名付け、その構造を素描する。まず減災システム社会における技術の好事例として緊急地震速報を取り上げ、有機的に接続された技術ネットワークが生活と身体に浸透するさまを分析する。ついで減災システム社会の一般的構造を記述し、技術・身体・行動・改良のPDCAサイクルが中心を持たないまま持続することを指摘する。最後に、こうした減災システム社会の将来像の可能性として、減災システム社会それ自体の進化を徹底する「情報アプローチ」と、生活における意味を注意深く読み取りながら諸価値の調和を試みる「生活アプローチ」を提示する。