著者
高取 逸子 増澤 康男
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.32, 2010

1 研究の背景と目的<br> 中央審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(1999年12月)の中で「高等学校における生徒の能力・適性・意欲・関心に応じた進路指導や学習指導の充実」が明記され、「高大連携」は飛躍的に拡大した。勤務校では、京都高大連携研究協議会「2006~2008年度実践研究共同教育プログラム」*による授業を「家庭基礎」で実施した。本研究の目的は、この実践の成果を検証し今後の方向性を探ることである。<br> 今回の学習指導要領の改訂において、「家庭科」では、生徒自身が考える場面を設定し、科学的根拠に基づいた学習指導を行うことが従来にも増して大切になると考える。一方、昨今の「食の安全」に関わる社会問題の増加は、「家庭科」の授業内容を理解し生活に生かすことが、21世紀を生きる生徒にとってますます重要となっていることを浮き彫りにしてきた。現代人の食生活にスポットをあて、飽食の時代に生きる高校生が自らの栄養事情を考えることができる授業を構築することが、家庭科に求められているといえよう。<br> 以上を踏まえ、本研究では、高大連携授業を通じて大学での専門的で、かつ先端的な知識を学ぶことにより、現在の若年層の中でスポーツ効果やダイエット等注目を浴びているサプリメントや機能性食品について、どのような知識・情報を持って選択していけばよいか、またその科学的効果について考えることを目標に授業を構築し、以下の4点が達成できたかどうかを検証することとした。<br>(1)探求的学習として興味・関心が得られたか。<br>(2)授業への積極的な参加が促されたか。<br>(3)教科内容の理解は向上したか。<br>(4)進路希望実現への「学び」の広がりはできたか。<br>2 高大連携授業の内容<br>(1)連携大学:京都府立医科大学・京都府立大・同志社大学<br>(2)対象生徒:2006・2007年度3年生、2008年度2年生「学力伸長コース」<br>(3)学習内容:題 「サプリメントを科学する。 _I_・_II_・_III_」<br>日常摂取する食材や市販サプリメントについて の実験・調査研究。<br>(4)学習目的:データ収集と分析、考察、科学的根拠に基づいての検証。<br>(5)授業回数:2006・2007年度 6回10時間、2008年度8回14時間<br> 3 結果と考察<br> 主として、2年生を対象とした2008年度における生徒アンケートにもとづいて評価・考察を行った。アンケート結果においては、検証目的であった4点について、ほぼ達成出来たことを示していると考えられた。特に教科内容の理解向上については、大学の先生より現代人における食生活の実態やその問題点、生活習慣病との関わり等、現代の「食」についての理解を深める講義を受け、その中で自分の食生活についても問題点はないのかを考え、毎日の食事の大切さとバランスの良い栄養摂取方法についての理解も深めた。<br> 講義レポートでは70%の生徒が自分の理解できた具体的な内容を書いており、次の講義に向けて、20%の生徒が質問を投げかけている。大学の講義内容に不安を持って臨んだ生徒も、前向きに大学の講義内容を理解しようという姿勢が見られたことが評価される。生徒たちは、「調査・研究」という新しい授業に対して、興味を示しつつも最初は戸惑いも多い。しかし内容を理解するにつれ、楽しんで積極的に取り組む生徒が大半になった。「仮説」「実験」「検証」というプロセスを通して、思考方法や、学びに対する視野が広がり、また「地域・保護者授業公開」という大きな場での発表で、良い評価を得て自信になった。同時に、プレゼンテーションの難しさを経験することも出来た。<br>「進路希望実現」という課題においては、大学で学ぶ目的を、早期から具体的に考える生徒が多く見られ、本校での進路指導にも大きく貢献することも出来た。<br> 今回の取り組みは、生徒の「学習意欲向上」につなげることが大きな目的であった。この点については所期の目的を達成したと考える。そして、高校と大学双方の教員が互いに影響し合いながらともに高め合える関係が構築されるようにすることも大切な課題であるが、高校と大学が共通理解を持って連携教育プログラムを開発するには、事前準備等の時間的確保や校内での周知徹底と授業時間確保などに対する学校体制の整備、予算面での行政支援等が望まれる。そのためには的確なコーディネーターの存在が必須であると考える。<br>(謝辞)2006年度~2008年度までの3年間にわたる高大連携授業の実施では、京都高大連携実践研究プログラム総括責任者を務めていただいた京都府立医科大学吉川敏一教授をはじめ、同志社大学市川寛教授、大妻女子