著者
高山 秀則
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.1840-1850, 1986-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
32

ヒトおよびラットの精巣内毛細血管の透過性および精巣, 血液関門の構造を硝酸ランタンを動脈側より注入灌流するか, 精巣組織を直接に硝酸ランタン液内に浸透させ電子顕微鏡的に観察した. また, 精巣毛細血管の通常電子顕微鏡観察をすることによって血液関門としての微細構造につき検討した.ヒト精巣毛細血管ではすべての毛細血管にランタンの透過性を認めるのではなく, 一部のものに限られた. しかも, 毛細血管を透過したランタンは間質組織を通過し, 精細管内に達するものはみられなかった. ITCとPTCとでは透過性の相違は認められなかった.ラット精巣毛細血管はITC, PTCの区別なくランタン透過性は良好で, 血管外に透過したランタンは間質, 精細管壁を透過し, 精細管内のセルトリ細胞間の特殊結合部位で停止した.ヒト, ラットの精巣毛細血管の微細構造は本質的には同様であるが, 内皮細胞間の結合様式に相違が認められた. つまり, ヒトの場合には tight junction や desmosome 様の結合様式をとることが多いが, ラットの場合には gap junction の形態をとることが多い. ここにランタン透過性に相違が認められる根拠があると考えられる.ラットの精巣毛細血管は精巣・血液関門としての機能を有しないが, ヒトの場合に不完全ながら関門としての機能を有し, 能動的な物質交換の場となり得ると考えられる.