著者
岸本 裕充 高岡 一樹
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.191-199, 2017-09-30 (Released:2017-11-05)
参考文献数
26

2010年にわが国の5学会の顎骨壊死検討委員会から出されたポジションペーパーが2016年に改訂され,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)の新しい診断基準が示された.ビスフォスフォネートやデノスマブのような骨吸収抑制薬は,骨転移を有する悪性腫瘍患者や骨粗鬆症に投与されており,ARONJは骨吸収抑制薬で治療を受ける患者におけるまれな合併症である.ポジションペーパーには,医師と歯科医師との間の相互連携と協力がARONJを管理するために重要,と提唱されている.まず,骨吸収抑制薬による治療開始までに,抜歯などの骨への侵襲を伴う歯科治療は終えておくことが望ましい.医師から歯科医師への依頼は少ないのが現状で,これを増やすことが急務である.そして,治療開始までに口腔管理が開始されたとしても,骨吸収抑制薬を投与中に歯性感染症を生じることはあり得る.抜歯はARONJ発症のリスク因子の1つとされるが,抜歯を避けることによる感染の持続もまたリスクであり,必要に応じて抜歯する.ARONJ予防のための骨吸収抑制薬の休薬の有効性は証明されていないため,医師と歯科医師との間で慎重に協議,検討する.