著者
高木 一江
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.253-258, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
17

【目的】神経発達障害のてんかん合併例の治療として, levetiracetam (LEV) を併用投与した症例の有効性と忍容性を検討した. 【方法】2011年10月~2014年12月までにLEVを処方した神経発達障害21例 (男女比16 : 5, 現在の年齢分布は10歳代6例, 20歳代7例, 30歳代7例, 40歳代1例) を対象とした. 効果は発作消失, 有効 (75%以上発作減少, 50%以上発作減少), 不変 (変化なし), 悪化 (発作回数増加) とした. 【結果】自閉スペクトラム症 (ASD) 19例 (最重度知的能力障害13例, 重度知的能力障害5例, 高機能1例), 境界知能1例, 注意欠如・多動症 (AD/HD) 1例であった. てんかんとてんかん症候群国際分類 (1989年) は, 症候性局在関連性てんかん15例, 全般てんかん6例であった. LEVの開始用量は平均488.1mg/日, 維持用量は平均1,714.2mg/日, 平均投与期間は2年3カ月であった. 奏効率は発作消失11例 (52.4%), 75%以上発作減少4例 (19.0%), 50%以上発作減少3例 (14.3%) で, 奏効率は85.7% (18例) であった. その他, 不変14.3% (3例) で, 悪化例はなかった. 初期の浮動性めまいが1例のみで, 全例で服薬継続中である. 抗けいれん剤はLEV開始時2.5剤から1.5剤まで調整でき, 情緒的安定も得られ, 精神安定剤が中止できた例もあった. 【結論】LEVはASDを中心とした神経発達障害のてんかん合併例において高い奏効率と忍容性を示した. 本剤の投与により併用薬数を減らすことができ, コンプライアンスの向上に寄与する可能性が示唆された.