著者
前川 昭次 高木 律幸 小島 弓佳 石塚 威 富田 沙織 南部 計 今井 晋二 岩佐 文代
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G4P3228-G4P3228, 2010

【目的】当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)は、国立大学法人附属病院としては本邦で初めての例として、平成20年6月に開設された。現在、開設後1年4カ月が経過したが、回リハ病棟の設置により病院全体としてどのような効果があり、患者にとっていかなる利益を供与できたかを知ることは、今後の病棟運営において非常に重要なポイントとなる。そこで、ここでは当院回リハ病棟の概要を紹介するとともに大学病院における回リハ病棟の位置付けについて各種統計データから考察することにする。<BR>【方法】回リハ病棟の病床数は46床、スタッフは回リハ医師4名(専従1名、専任3名、出身診療科:整形外科2名、神経内科1名、循環器内科1名)、理学療法士(以下、PT)3名(専従2名、専任1名)、作業療法士3名(専従1名、専任2名)看護師23名、看護補助者3名である。データは平成20年6月の回リハ病棟開設から平成21年9月までの実績(診療科別入棟患者数・割合、回リハ病棟在院日数、在宅復帰率)を算出した。そして回リハ病棟開設により、急性期の関係各診療科の在院日数がどのように変化したかを開設前、後で比較した。<BR>【説明と同意】当院は大学病院であるため患者には入院時に研究協力について理解が得られている。さらに、本研究の趣旨について回リハ病棟入棟時に説明を加え同意を得ている。<BR>【結果】平成20年6月~平成21年9月までに回リハ病棟に入棟した患者総数は371例で診療科別内訳は整形外科298例(80.3%)、脳外科27例(7.3%)、神経内科26例(7.0%)、心臓血管外科14例(3.8%)、その他6例(1.6%)であった。回リハ病棟在院日数の平均は39.6日で診療科別では整形外科31.4日、脳外科76.5日、神経内科84.1日、心臓血管外科63.8日、その他55.6日であった。在宅復帰率は全体平均が96.4%、診療科別では整形外科98.9%、脳外科87.0%、神経内科86.4%、心臓血管外科83.3%であった。回リハ病棟の入棟患者が多い診療科の在院日数を回リハ開設前(平成19年4月~20年3月)、後(平成20年6月~21年9月)で比較したところ、整形外科開設前24.4日、開設後17.8日、脳外科21.5日、21.9日、神経内科26.9日、26.6日、心臓血管外科22.1日、23.3日であった。<BR>【考察】ここで算出したデータと「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する報告書」(以下、報告書)に記されているデータを比較することにする。報告書の専従職員数平均は医師1.2名、PT4.3名、OT3.2名、ST0.9名、看護師16.5名、看護補助者9.1名であった。当院において平均値を上回っているのは看護師数のみであった。当院の場合専従医師数は1名であるが、専任医師3名の回リハ病棟患者の管理に関わる比重は大きく、ほぼ専従と同等のレベルにある。報告書のデータからも推察されるように、一般病床を有する施設の多くは回リハ病棟患者の主治医は急性期担当医師が兼務する場合が多く、当院のように4名の医師が各々の専門領域の疾患に応じて主治医となっているのは特徴の一つである。したがって、患者に何らかの不都合が生じた場合迅速な対応が可能であるだけでなく、スムーズな病棟運営に大いに貢献しているものと考える。看護師数は報告書の平均を上回っているが、これは看護補助者の配置が少ない分、相応な人員配置といえる。診療科別内訳について報告書では、脳血管系54.0%、整形外科系32.2%、廃用症候群11.9%となっている。当院の場合整形外科が圧倒的に多いが、先にも記したように、医師が専門領域別に必ず主治医となることと、整形外科医師が4名中2名人員配置されていることから、整形外科患者が最も多いことは当然の結果といえる。しかしながら、8割を超えることは開設前のシミュレーションからすれば予想外の結果であり、今後の病棟運営における検討課題の一つである。在宅復帰率についても同様に、整形外科患者が多いことがこのような高値につながったものと考える。回リハ病棟開設後の各診療科の入院在院日数の変化については、整形外科で約1週間短縮されており貢献度としては十分な結果であったといえよう。他の診療科については入院患者数に占める回リハ入棟患者の割合が少ないため、貢献度を推し測ることは困難である。今後他の統計手法を用い検討する必要がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】本邦の国立大学法人附属病院では唯一の回リハ病棟であり、今後さらにデータを蓄積し公開することは他大学の参考となるだけでなく、本邦における回リハ病棟の位置づけや方針を考えていくうえで重要なデータとなるものと考える。<BR>