- 著者
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時吉 直祐
諌武 稔
高松 敬三
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C0450, 2006 (Released:2006-04-29)
【目的】膝OAを有する患者の多くは痛みの寛解を期待し通院治療を受けている。しかし、その通院時の歩行動作自体もまた膝関節への負担を強いられるものではないだろうか。大腿脛骨関節では平地歩行時に体重の約3倍、階段昇降時に体重の約4~5倍の応力が、膝蓋大腿関節では平地歩行時に体重の約0.5倍、階段昇降時に体重の約3.5倍の圧迫応力が加わるという報告もある。そこで変形性膝関節症(以下膝OA)を有する患者の外来通院時における歩行動作が膝関節に及ぼす影響とホームエクササイズ適応の可否を検証した。【方法】膝OAと診断され外来通院している患者22名(男性4名6膝、女性18名26膝、平均年齢74.4±12.4歳)を対象として、通院手段、通院における立位・歩行に要する時間、通院における段差昇降回数、ホームエクササイズ実施の有無、ということと日常生活における痛みの程度、病院(リハビリ室)到着直後の痛みの程度、理学療法治療直後の痛みの程度を調査した。評価はVisual Analog Scale(以下VAS)と日本整形外科学会OA膝治療成績判定基準(JOAスコア)にて行い、統計処理にはスピアマンの順位相関係数を用い相関の検定を行った。【結果】日常生活における痛みの程度と病院到着後の痛みの程度に著明な有意差は認められなかった。また、病院到着後の痛みの程度と通院における立位・歩行に要する時間及び段差昇降回数においての相関は相関なしとなった。病院到着後の痛みの程度と理学療法実施直後の痛みの程度においてVASでは痛み幅平均46%の減少を見せ、ホームエクササイズをしている群では理学療法治療直後の痛みの程度において正の相関がみられ、また治療効果の持続時間が長い傾向もみられた。【考察及びまとめ】当初通院による歩行動作自体が膝関節に負担を与えているのではないかと考えたが、痛みという観点からみた場合今回の調査では通院における歩行動作が膝OAを増悪させるという事には結び付かなかった。これは膝OA患者が通院においても膝関節への負担を増強させないための通院手段をとっていた事、また無理な段差昇降は避けるなど患者自身が膝関節への負担を考え行動していた事などが要因であるのではないかと考えられる。しかし帰宅後痛みが再現しているのも事実であり通院による歩行動作以外に膝関節への負担になる要素が日常生活においてあるのではないかと考えられる。こうした中、ホームエクササイズを行っている患者群が理学療法実施後の痛みの寛解に良い成績を残し、さらに治療効果の持続性にも有効であるという事を示唆する結果となった。したがって今回の調査において良好な成績を得たホームエクササイズ適応の可否を判断しながら膝OAの増悪防止に努めるとともに今回の分析で明らかにできなかった視点からの通院時における歩行動作が膝関節に及ぼす影響を更に追及し今後のアプローチに役立てていきたい。