著者
高橋 儀宏
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

新規ボレート系非線形光学結晶LiBGeO_4が析出した透明結晶化ガラスを用いて、LiBGeO_4の二次非線形光学定数をMakerフリンジ法により評価した。その結果LiBGeO_4はd_<33>〜1.3pm/Vと見積もられ、β-BaB_2O_4単結晶に匹敵することを初めて見出した。Fresnoite型構造を有するBa_2TiGe_2O_8(BTG)結晶化ガラスの非線形性の再評価および他のfresnoite型結晶Ba_2TiSi_2O_8(BTS)およびSr_2TiSi_2O_8(STS)について透明結晶化ガラスを作製し、fresnoite型結晶の非線形性を体系的に評価した。またそれら結晶構造と非線形性の起源について研究を行った。BTG結晶化ガラスの非線形性についてはd_<33>〜22pm/VというLiNbO_3単結晶のそれに匹敵する非線形性を確認した。これはガラス材料で報告されている二次線形性の中では最大である。この試料は、BTGが配向薄膜状に生成しており、平面導波路として機能することも確認し、新たな波長変換素子や光スイッチなどの光デバイス材料として提案した。またBTSおよびSTS結晶化試料のd_<33>はそれぞれ12pm/Vおよび7.2pm/Vと見積もられた。Fresnoite型結晶の格子定数比c/aはd_<33>と同様にBTG, BTS, STSの順に大きく、これはBaやGeなどより大きなイオンが導入されることでc軸が伸張し、自発分極が増長された結果、非線形性も増大したものと結論付けた。目的結晶の量論組成を有するガラスは、結晶化することで不純物相が析出しない、密な配向結晶を得ることが可能である。LiBGeO_4やfresnoite型結晶は単結晶育成が極めて困難な結晶である。しかしながら、結晶化を利用することで非線形性が評価できることを初めて実証した。この手法は非線形光学分野の材料探索において非常に有用である。