著者
徳山 尚吾 高橋 正克
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.195-201, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
42
被引用文献数
4 5

モルヒネをはじめとするオピオイドおよびメタンフェタミンなどの精神賦活薬によって誘発される種々の効果に対する薬用人参の薬理学的·生理学的作用について概説する.薬用人参は, モルヒネ, μオピオイド受容体アゴニストやU-50, 488H, κオピオイド受容体アゴニストの鎮痛効果に対して, オピオイド系を介さない様式で拮抗作用を示す.さらに, モルヒネの鎮痛効果に対する耐性形成および身体的·精神的依存に対しても, 薬用人参は抑制作用を有するとの知見が多いが, その種類, 用量, 投与スケジュール等の違いによって成績が異なる報告もなされている.また, 薬用人参は, メタンフェタミンやコカインなどの反復投与による運動量の経時的な増強作用, すなわち行動感作(逆耐性現象)の形成も阻止する.興味深いことに, メタンフェタミンおよびコカインの反復投与終了後30日間休薬してから, 再びこれらの薬物を投与することによって誘発される再燃現象(フラッシュバック)に対しても, 薬用人参による抑制作用が見出されている.さらに, メタンフェタミンおよびコカインは精神的依存能の評価法の一つとされる条件付け位置嗜好性を示すが, その効果も薬用人参は消失させる.これらの知見は, オピオイドや精神賦活薬による乱用および依存に対して, 薬用人参が有効な治療薬に成りうる可能性を示唆するものである.