著者
高橋 知花
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.87-108, 2021-02-15 (Released:2022-03-10)
参考文献数
23

本稿の目的は、森林の過少利用を改善するための取り組みが、どのような諸条件の下で実践されうるのかを考察することである。過少利用問題の改善策としては、これまで生業や経済的な観点が重視されてきたが、本稿では「コモンズ」の観点から、新たな改善策を検討し、森林の過少利用問題が改善されうる諸条件を明らかにする。事例として取り上げるのは、秋田県能代市二ツ井町梅内地区で活動する任意団体「二ツ井宝の森林(やま)プロジェクト」である。 考察の結果、本事例においては、①まず、共有林や私有林において、入会慣行や総有に基づいた独自の森林整備が展開されており、②そこでは、必ずしも経済的に生活を成り立たせるわけではない活動にマイナーサブシステンスとしての意義が見出されていること、③また、地区における先人たちの功績としての植林の歴史が想起されることが、活動をまとめる契機となっており、そのことが森林の過少利用問題が改善されうる条件になっていることが明らかになった。