著者
井戸田 一朗 日台 裕子 菊池 賢 山浦 常 戸塚 恭一 高橋 純生 長田 広司 清水 勝
出版者
日本エイズ学会
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-22, 2002

目的: 当院で経験したHIV感染症例の臨床像および背景について検討する.<BR>対象及び方法: 1988年から2000年の間に, 当院にてHIV抗体陽性が判明した26症例を対象とし, 保存されている22症例の病歴を中心に調査した.<BR>結果: 患者背景として, 全例男性であり, 判明時の平均年齢は42歳 (n=26) であった. 日本人が22名, 外国人は4名で, 外国人のうち1名は行旅病人法の適用を申請した. 感染経路では異性間接触が8例, 同性間接触が8例, 両性間接触が2例であった. 初診時のCD4値は平均193/μl (n=22) で, AIDS発症は9例, ARCは9例に認め, 食道/口腔カンジダ症が10例と最も多かった. 性感染症の合併として, 活動性の梅毒を7例, アメーバ赤痢を4例, 急性A型肝炎を2例認め, その多くはMSM (Men who have Sex with Men) であった. HIV陽性判明のきっかけとして, 検査や術前のスクリーニングでの判明が4例, 他疾患にて通院中にARCを発症して判明した例が3例, また救急外来搬送後に判明した例が3例あった.<BR>考察: 当院は1997年12月にエイズ拠点病院に選定された. 当院の特徴として1日の平均外来患者数4,270名, ベッド数1,423床と病院全体としての患者数が多く, 日常診療の延長におけるHIV抗体陽性例が増加している. 一般病院においても, 救急外来や性感染症担当科での陽性発生を想定した準備が必要と考えられた.