著者
高橋 美希子 淡路 静佳 佐藤 香織 松本 香好美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0097-C0097, 2004

【はじめに】<BR> 人が立位保持や歩行をする際、唯一地面に接する部位は足部であり、足趾は立位・歩行時の安定性に関与している。足趾筋力が歩行時のバランス、スピード、推進力、感覚に影響を及ぼすとの報告は多いが、我々は、臨床の場面において足底・足部の機能へはほとんどアプローチできていないのが現状である。そこで今回、足趾を中心とする足部への筋力強化が短期間でどこまで歩行時の安定性に影響を与えるかを調査した。<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は2003年10月28日から11月22日の間、当介護老人保健施設(老健)に入所している歩行可能な者(walker,T-cane,Q-cane使用者)11名(男性1名、女性10名、平均年齢84、1±7、5歳)である。疾患の内訳は(脳卒中片麻痺3名、大腿骨頚部骨折3名、変形性腰椎症1名、脳卒中・整形疾患両方に罹患1名、循環器疾患3名)であった。評価項目は、足趾筋力(MMT)、10m歩行速度、歩数、歩容(バランス、スピード、HC・TOの有無)、足部の変形・形状・アーチ、足部・足趾の関節可動域(ROM)、安静時における矢状面・前額面のアライメント、安静立位における足底筋筋緊張、重心線とし、治療前後で比較した。方法は、対象者全員に、椅座位で裸足のまま、股・膝関節90°屈曲位の状態から長方形の薄手のタオルを足趾で引き寄せるよう指導及び実施した。開始から終了までの所要時間を計り、初回と同タイムになったら0、5kgの重錘をタオル上に負荷する。また、この他にゲートボールの球を足底部で前後・左右へ転がす動作も行った。各動作は週5日間継続して行った。歩容・重心線についてはデジタルカメラにて画像解析した。統計処理には、StatView5.0を使用し、Student-t検定を用い、危険率5%以下を有意とした。<BR>【結果】<BR> 足部のROMは左背屈、左右外返しにおいて治療前後で有意に改善した(p<0.05)。足趾のROMでは右拇指・左示指・左中指・左環指のMPjt屈曲、右拇指・右小指・左示指・左環指・左小指のPIPjt屈曲、右示指・右環指のDIPjt屈曲でそれぞれ有意差を認めた(p<0.05)。また、10mの歩数が治療前後で有意に改善した。MMTは、有意差が認められなかった。<BR>【考察・まとめ】<BR> 今回、3週間という短期間で足部及び足趾のROMは有意に改善したが、筋力までの効果は得られなかった。しかし、ほとんどの対象者は歩行スピードの向上や歩行バランスの安定化など、歩容が改善する傾向を示した。今後は、足趾把握筋力の短期効果だけでなく、長期効果や、疾患別の比較などを行い、入所者が安全で効率の良い歩行が出来るよう更に検討していきたい。