- 著者
-
高橋 雅樹
- 出版者
- 静岡大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
本年度は、これまでに疑似結晶分子構造を有するアントラセン-ペリレンデンドリマーの光捕集分子機能を応用した「多チャンネル分子センサー」の基礎概念の確立を試みた。具体的には、ペリレンをコアに配し、その両末端に2残基のアントラセンを配したアントラセン-ペリレン連結体を「多チャンネル分子センサー」として構築し、その内部に発現するエネルギー捕集を伴った分子センサー機能の開発について検討を行った。まず、「アントラセン-ペリレン連結体」の基本部分であるアントラセン及びペリレン単体化合物のセンサー機能について検討を行った。各化合物の構造末端にセンサーのスイッチ機能の役割を果たすアミノ基を導入し、pH変化による蛍光発光強度の変化について検討した。その結果、各分子への塩酸を始めとした酸の添加により、アントラセン単体分子では約10倍、ペリレン単体分子では約2倍の発光強度の増加が認められ、アミノ基によるスイッチ機能が利用可能であることを確認した。つぎに、これらの発色団がアミノ基を介し結合した構造を有する「アントラセン-ペリレン連結体」について、pH変化による蛍光発光強度変化について検討を行った。励起波長をアントラセンの吸収領域に合わせ蛍光発光測定を行った場合、pH変化に関わりなく一定強度のペリレン発光を与える一方、励起波長をペリレンの吸収領域に合わせ観測を行った場合、pH変化に応じペリレンの蛍光発光強度が増減しセンサー機能の発現が認められた。以上のことから、「アントラセン-ペリレン連結体」は、測定に用いる励起波長に応じ、センサー機能と非センサー機能の使い分けが可能な「多チャンネル分子センサー」として有用なナノフォトニクス分子素子であることを明らかにした。