著者
高橋(松鵜) 甲枝 井上 範江 児玉 有子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.3_58-3_66, 2006-09-20 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
4 2

本研究は,高齢者夫婦二人暮らしの介護がどのように継続されているかについて示唆を得るため,介護継続の意思を支える要素と妨げる要素の二つの側面から介護する配偶者の内的心情を探求した.その結果,介護継続の意思を支える要素は,『やりがい』,『被介護者への愛着』,『慈愛の気持ち』,『献身的な思い』,『被介護者への恩義』,『安心感』,『気晴らしがあること』,『負担に思わないこと』の8つのカテゴリーが抽出された.『被介護者への愛着』は『慈愛の気持ち』とともに『献身的な思い』という自己犠牲の感情を支えていると考えられ,『やりがい』は介護継続の意思を直接的に支えていると考えられた.一方,介護継続の意思を妨げる要素は,『いらだたしさ』,『閉塞感』,『不安感』,『諦めの気持ち』,『孤独感』,『周囲への気兼ね』の6つのカテゴリーが抽出された.『いらだたしさ』は直接的に介護継続の意思を妨げる要素だと考えられた.介護者は,夫婦二人暮らしの中で,『諦めの気持ち』から生じたやらざるを得ない気持ちと『献身的な思い』とのせめぎあいの中で介護を行っていることが推察された.看護職は,介護者自身が介護の効果を確認できるように関わり,自己犠牲の思いにつながる負担を軽減することの必要性が示唆された.