- 著者
-
高橋,久美子
- 出版者
- 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.1, 2003-01-15
性意識の中でもとくにセックス観に注目し,父親と母親のセックス観が性教育に及ぼす影響について検討した。主要な分析結果は以下のとおりである。取り上げた5項目のセックス観のすべてにおいて,父親に比べて母親は否定的で禁欲的な考え方をもっていた。父親と母親の意識の差は,とくに快楽の肯定と男性による女性の道具視の項目で大きかった。母親では,禁欲の必要性の項目が快楽の肯定や女性の道具視の項目との間で関連が認められた。父親と母親のいずれも,性に関する会話への抵抗感をもつものが半数いた。子どもとテレビ視聴時のラブシーン場面において平静という者は予想外に多く,母親でも半数いた。父親と母親のいずれも,性教育の内容として取り上げた10項目のうち,家庭で必要と思う項目と学校で必要と思う項目はほぼ同数の5項目であった。しかし,家庭で必要と思う項目と学校で必要と思う項目の内容は対照的であった。家庭で実際になされた項目は少なく,2〜3項目でしかなかった。父親と母親のいずれも,家庭での性教育の必要性の意識と性教育の実践とは関連が認められた。性教育の実践に対し,父親では性に関する会話抵抗感は直接に関連し,母親では家庭での性教育の必要性の意識を通して関連していた。さらに,セックス観のなかでも禁欲の必要性の意識と性に関する会話抵抗感との間で関連が認められた。