著者
高津 竜之介
出版者
日仏経営学会
雑誌
日仏経営学会誌 (ISSN:09151206)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.48-63, 2021 (Released:2021-09-20)
参考文献数
6

近年、様々な社会問題への解決策として市民社会を基盤とするソーシャル・イノベーションが注目を集めている。なぜなら国主導の発展モデルでは地域の持つ多様なニーズに対して画一的な行政システムしか実施できず、市場メカニズムに依存する新自由主義モデルでは、経済的便益をもたらさない限り社会的弱者を救済する仕組みが存在しないからである。本稿では、ソーシャル・イノベーションの視点から共有財産としての景観をめぐる地域のアクションについて考察する。まずフランスで生まれた景観保護運動がどのように日本に持ち込まれ適応されたのかについて、各国の協会で用いられている資格審査基準の比較を通じて検討を行う。続いてそれらの差異がどのような理由により生じているのかについて日仏の行政制度の違いに焦点を当て説明を加え、日本のトップダウン型まちづくりの限界を示す。最後にソーシャル・イノベーションに関する理論的考察をもとに、住民の自主性に基づいて地域の景観の価値を高める活動ついて示唆的な提案を行うことを目的とする。