著者
高濱 謙太朗
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、テロメアが形成するグアニン四重鎖に対するTLSの結合性とテロメアにおける機能との関係を明らかにすることである。そこで研究計画では、平成24年度に試験管におけるTLSのテロメアDNAとテロメアRNAに対する認識機構を詳細に解析して、平成25年度に細胞内でのTLSによるテロメアDNAとテロメアRANAの結合性と、TLSがガン化の機構に関与しているかを解析することであった。実験計画が当初の予定以上に進展し、平成24年度中にTLSのRGG3領域がテロメアDNAとテロメアRNAに対してグアニン四重鎖特異的に同時に結合することを明らかにして、テロメア構造のヘテロクロマチン化とテロメア短縮に関与していることがわかった。この結果はChemistry & Biology誌に掲載された(Chemistry & Biology (2013) 20, 341-350.)。そこで本年は、TLSのRGG領域によるテロメアDNAとテロメアRNAに同時に結合する分子機構をさらに詳細に解析することで、テロメアRNAが形成するグアニン四重鎖に結合する分子の開発を行なった。RGG領域中の芳香族アミノ酸がグアニン四重鎖DNAとRNAの識別に重要であることを見出したので、このタンパク質中の芳香族アミノ酸をすべてチロシンにしたところグアニン四重鎖DNAに結合せず、RNAに結合することがわかった。さらに、この開発されたタンパク質はグアニン四重鎖RAAのループ構造の2'-OHを認識することがわかった。これらの結果はJournal of American Chemical Society誌に掲載された(J. Am. Chem. Soc. (2013) 135, 18016-8019.)。この成果は、グアニン四重鎖構造の機能解明に大きく貢献すると考えられる。