著者
髙城 隆一
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP) (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.267-282, 2020-10-31

本稿では、先行研究によって「一型アクセント」であるとされてきた鹿児島県の大隅半島東部で話されている内之浦方言のアクセント体系を記述し、二型アクセントの痕跡が今なお残存することを指摘する。拡張語を2つ以上使用した文中での名詞の発音を観察すると、ある話者の発音では鹿児島市方言の二型アクセントと類似する、対立する2 種類のアクセント型が現れることから、この話者が鹿児島市方言と同じ二型アクセントに近い体系を意識下に持っていると考える。さらに、拡張語を単独で発音した際にはアクセント型の対立が見られない別の話者も、文中での発音においては2 種類のアクセント型が比較的安定して現れることが明らかになった。両話者の体系にはそれぞれ鹿児島市方言とのアクセント型の対応や語末音素による条件づけが想定でき、これは二型アクセントから変化したものであると考えられる。論文 Articles