- 著者
-
髙宮 優実
- 出版者
- 現代日本語研究会
- 雑誌
- ことば (ISSN:03894878)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.90-107, 2021-12-31 (Released:2021-12-31)
- 参考文献数
- 17
近年、多様性の進む日本において、「ブラック企業」という語は差別語なのではないかという議論がなされている。アメリカで日本語を学ぶ大学生134名に、2年間にわたり、このテーマに関連した多数の新聞記事や動画を紹介し、その後、学習システム上のディスカッションボード(電子掲示板)を使用して学習者同士が議論する場を設けた。そのディスカッションボードで行われた学習者同士の議論を分析した結果、この語は差別語ではなく使い続けることに問題がないという学習者が51%、問題であるという学習者が28%、どちらとも言えないという学習者が21%いて、立場が分かれることがわかった。また、どの立場の学習者からも、変更するとしたらどのような語が考えられるかという代替案が提示されていた。投稿の分析からは、いずれの立場の学習者も、他者の意見を肯定しつつ自分の立場を表明しており、それが外国語教育の目的である相互コミュニケーション能力の獲得につながる第三次社会化の過程となっていることが確認された。