著者
髙木 浩明
出版者
清風高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

○研究目的古活字版の研究は、川瀬一馬の『古活字版之研究』(初版 : 安田文庫、1937年。増補版 : A・B・A・J、1967年)において総合的かつ網羅的な調査がなされている。同書は古活字版の研究にとって必読の文献であるが、川瀬氏の研究以後、新たに見出された伝本や所蔵先が変わった伝本、分類自体を見直さなければならないものも多く存在する。古活字版の悉皆調査を通して川瀬氏の調査研究結果を再検討すること、さらには、古活字版がいかなる人的な環境、ネットワークのもとに生み出されたものかをより多くの資料調査を通して明らかにして行くこと、将来の古活字版データーベース構築へ向けての礎とすることを目的とする。○研究方法本研究では、宮内庁書陵部に所蔵される古活字版(予め目録から抽出した130点)を対象に、体裁・表紙・装釘・題簽・内題・尾題・本文・匡郭・版心・丁数・刊記・印記・備考(識語や書き入れの有無など)の13項目について原本に当たり、一点一点丁寧に調査した。○研究成果調査を予定していた古活字版のうち、修補の必要があって原本での閲覧ができなかったもの等があったものの、121点の古活字版の調査を行い、これまでの調査分と合わせて971点のデータの蓄積ができた。今回の調査での一番の収穫は、川瀬一馬の『古活字版之研究』に著録されていない以下の古活字版を発掘できたことである。医経小学(558-24)、活幼全書(558-58)、黄帝内経素問(403-110)小学集説(国-159)、素問入式運気論奥(403-86)、年代紀略(谷-10)は全くこれまで所在すら知られていなかったもので、元亨釈書(556-106)、左大将家六百番歌合(155-195)、北渓先生性理字義(国-195)は新たに異なる版種を見出すことができたものである。