著者
髙木 由起子 廣瀬 幸市
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-34, 2021-07

高校において表面的な関わりをし、深く思考しない、自分の感情を理解し表出することができない生徒が増えてきているように感じる。また、いくつかの調査から、青少年が幸せと感じる割合は年々増えているが、一方で自殺者数も増加し続けているという結果が読み取れる。そこで、青年の変化に関連すると思われる内容について文献を調査した。従来心理学では、大人になるということは一元的自己を獲得していくこととされてきたが、変化していく社会に適応する形として、多元的自己の傾向が指摘されている。また、インターネットで好まれる言語形式の影響を受け、深く考えない曖昧さを欠いた短絡的思考(本稿では「ネット的思考」と呼ぶ)が広まっているという指摘がある。これらを概観して、現代社会に適応する形態として現れたと言える、多元的自己と「ネット的思考」を特徴としてもつ現代の青年について、その課題を推察した。