著者
樋口 亜瑞佐 梨谷 美帆
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻号頁・発行日
no.11, pp.9-18, 2021-07

本稿は、LGBTsに関する臨床心理学的支援をテーマに、児童・思春期段階にあるトランスジェンダー当事者のケースについて、性自認の視点から検討することを目的としたものである。現在のところ、LGBTsにとって性自認や性指向に対する揺らぎや葛藤は、児童・思春期の発達段階に自覚されることが多く、文部科学省はそうした児童生徒に対する個別的配慮の必要性について指摘する。本稿では児童・思春期のトランスジェンダー当事者ケースにおいて、取り巻く支援者や当事者家族が、どのように性自認をめぐる揺らぎや葛藤を理解し、援助のあり方を考えることができるのかについて、2つのエピソード事例をもとに検討を試みた。社会・学校・家庭で、無理解や孤立に晒されたトランスジェンダー当事者は、自己無価値観や将来への絶望を感じやすく、より重篤なメンタルヘルスの問題を抱えるリスクも高い。今後はLGBTsに対する正しい理解や適切な対応を周囲の支援者や当事者家族がより意識し、教育現場を含め社会そのものが性の多様性を受け入れることのできる素地作りに向けた取り組みを一層行っていく必要がある。
著者
梨谷 美帆 樋口 亜瑞佐
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.11-20, 2022-07

本稿は、LGBTsに関する臨床心理学的支援をテーマに、青年期の同性愛当事者のケースについて、性指向におけるアンデンティ構築の視点から検討することを目的としたものである。また、アイデンティティの構築過程における葛藤について、段階に応じた援助的アプローチについて述べる。性指向とは、性的関心や欲求の向かう対象を指し、本稿では青年期の同性愛当事者ケースにおいて、どのように当事者が性指向に関連する葛藤を体験し、その臨床心理学的援助のあり方をどう考えることができるのかについて、2つのエピソード事例をもとに検討を試みた。共通して、Thの多様な性に対しての肯定的態度やジェンダーニュートラルな姿勢は欠かせないものであったが、アイデンティティ構築の段階やセルフスティグマの強さによりアプローチのポイントが異なった。クライエントの自己受容のありようを見立て、次のステップに促進的な援助が必要であると考察した。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
no.2, pp.7-14, 2012-03

32回にわたり,近隣の家々の物干し竿などから女性の下着を盗んだ高校1年生男子A に実施した心理療法(箱庭療法とカウンセリング),および心理テスト(人物画,バウムテスト,TAT)の結果を報告し,下着盗みの心理的メカニズムを分析することにより,Aの内的世界について考察した。
著者
石田 靖彦
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.17-23, 2017-07

本研究では,大学生117名を対象に小学校から高校までの学級内の人間関係を回想させた上で,グループ間における非公式なステイタスの序列として定義される「スクールカースト」が,(1)各学校段階でどの程度あったか,(2)序列があった場合は,その序列の内容や理由を自由記述により回答を求めた。同性グループに対する序列化の認識率は,中学校でもっとも高く男子で77%,女子で87%が少しはあったと回答した。小学校でも男子で54%,女子で72%が少しはあったと回答しており,女子では小学校でもグループ間の序列化が行われていることが示された。高校では男子で67%,女子で62%で中学校よりも低下していた。一方,異性グループに対する序列化の認識は,同性グループに対する序列化の認識とは異なるとともに,その理由についても,男女で異なることが示された。以上の結果から,男女においてグループ間の序列が認識として共有されているのかどうか,また実態としてスクールカーストが存在するのかどうかについて議論した。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-14, 2012-03

32回にわたり,近隣の家々の物干し竿などから女性の下着を盗んだ高校1年生男子A に実施した心理療法(箱庭療法とカウンセリング),および心理テスト(人物画,バウムテスト,TAT)の結果を報告し,下着盗みの心理的メカニズムを分析することにより,Aの内的世界について考察した。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
no.2, pp.7-14, 2012-03

32回にわたり,近隣の家々の物干し竿などから女性の下着を盗んだ高校1年生男子A に実施した心理療法(箱庭療法とカウンセリング),および心理テスト(人物画,バウムテスト,TAT)の結果を報告し,下着盗みの心理的メカニズムを分析することにより,Aの内的世界について考察した。
著者
川瀬 実咲 吉岡 恒生
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.81-87, 2011-02

2007年度より特別支援教育がスタートし,障害をもつ児童・生徒に対して生涯に渡っての支援が求められている。また, 2009 年度の保育所保育指針の改定により,保育所児童保育要録の送付が義務づけられる等,就学前と就学後の連携を目指した取り組みが始まってきている。本研究は,保育園・幼稚園等から特別支援学級,特別支援学校への移行期を筆者が約1年に渡って縦断的に観察を行う事で,中,重度の知的な発達の遅れを伴う発達障害児にとっての必要な移行支援について検討していくものである。今回は,第一報として保育園での観察記録,就学直後の記録をもとに現時点での考察を①保育園と学校の連携②各事例の観察記録から見えてくること③保育士からの話④学校外の様子への配慮の4点から行った。
著者
髙木 由起子 廣瀬 幸市
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-34, 2021-07

高校において表面的な関わりをし、深く思考しない、自分の感情を理解し表出することができない生徒が増えてきているように感じる。また、いくつかの調査から、青少年が幸せと感じる割合は年々増えているが、一方で自殺者数も増加し続けているという結果が読み取れる。そこで、青年の変化に関連すると思われる内容について文献を調査した。従来心理学では、大人になるということは一元的自己を獲得していくこととされてきたが、変化していく社会に適応する形として、多元的自己の傾向が指摘されている。また、インターネットで好まれる言語形式の影響を受け、深く考えない曖昧さを欠いた短絡的思考(本稿では「ネット的思考」と呼ぶ)が広まっているという指摘がある。これらを概観して、現代社会に適応する形態として現れたと言える、多元的自己と「ネット的思考」を特徴としてもつ現代の青年について、その課題を推察した。
著者
樋口 亜瑞佐 梨谷 美帆
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.9-18, 2021-07

本稿は、LGBTsに関する臨床心理学的支援をテーマに、児童・思春期段階にあるトランスジェンダー当事者のケースについて、性自認の視点から検討することを目的としたものである。現在のところ、LGBTsにとって性自認や性指向に対する揺らぎや葛藤は、児童・思春期の発達段階に自覚されることが多く、文部科学省はそうした児童生徒に対する個別的配慮の必要性について指摘する。本稿では児童・思春期のトランスジェンダー当事者ケースにおいて、取り巻く支援者や当事者家族が、どのように性自認をめぐる揺らぎや葛藤を理解し、援助のあり方を考えることができるのかについて、2つのエピソード事例をもとに検討を試みた。社会・学校・家庭で、無理解や孤立に晒されたトランスジェンダー当事者は、自己無価値観や将来への絶望を感じやすく、より重篤なメンタルヘルスの問題を抱えるリスクも高い。今後はLGBTsに対する正しい理解や適切な対応を周囲の支援者や当事者家族がより意識し、教育現場を含め社会そのものが性の多様性を受け入れることのできる素地作りに向けた取り組みを一層行っていく必要がある。
著者
太田 綾 原田 宗忠
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
no.8, pp.[26]-[35], 2019-03

本研究では,教員志望学生において大学入学後の特別支援に関する経験,特別支援に対する認知的複雑性,援助要請スタイルが特別な支援を必要とする児童生徒の指導場面時の対処行動に関係する要因を場面想定法を用いた質問紙調査により検討した。その結果,設定した全ての指導場面において援助要請自立傾向から問題解決志向への正の影響,援助経験から問題解決に向けた対処行動への正の影響がみられた。一方で,援助要請過剰傾向は,気になる児童生徒への指導場面と緊急な対応を求められる児童生徒・対応が困難な児童生徒の指導場面とでは,対処行動に異なる影響がみられる等, 指導場面によって対処行動に関係する要因が異なることが示唆された。
著者
吉岡 恒生
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
no.2, pp.79-86, 2012-03

発達相談を担当する際,まずはアセスメントが求められる。アセスメントについて考える前に,「発達障害とは何か」について考えねばならないが,「発達障害」については,行政上の定義と学術上の定義が異なり,後者がより多くの障害を包括した概念となっている。我々臨床心理士は,職場に応じて「発達障害」という用語を使い分けている。「発達障害」という用語をはじめ,グレーゾーンと見なされる子どもの診断名は時代によって変遷する。それゆえ,この時代の「発達障害」近縁の概念を把握・整理し,その概念を相対化し「 」にくくった上で,目の前の子どもに対する支援の手立てを探っていくことが大切である。また,就園前母子療育施設において発達障害児のアセスメントをする際には,母親の心理状況を把握した上で支援方針を立て,定期的に母子に接する保育士のフォローへとつなげていくことが求められる。
著者
吉岡 恒生
出版者
愛知教育大学教育臨床総合センター
雑誌
愛知教育大学教育臨床総合センター紀要 (ISSN:21860475)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.79-86, 2012-03

発達相談を担当する際,まずはアセスメントが求められる。アセスメントについて考える前に,「発達障害とは何か」について考えねばならないが,「発達障害」については,行政上の定義と学術上の定義が異なり,後者がより多くの障害を包括した概念となっている。我々臨床心理士は,職場に応じて「発達障害」という用語を使い分けている。「発達障害」という用語をはじめ,グレーゾーンと見なされる子どもの診断名は時代によって変遷する。それゆえ,この時代の「発達障害」近縁の概念を把握・整理し,その概念を相対化し「 」にくくった上で,目の前の子どもに対する支援の手立てを探っていくことが大切である。また,就園前母子療育施設において発達障害児のアセスメントをする際には,母親の心理状況を把握した上で支援方針を立て,定期的に母子に接する保育士のフォローへとつなげていくことが求められる。