著者
髙橋 宣成
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.642-649, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

痙縮の定義が混乱している.そこで,Lance,島村,田中の定義など,和文文献で多く引用されている定義の相違点を分析した.混乱の要因として,相動性および緊張性伸張反射の区別,静止状態での持続的筋伸張による反射の解釈,rigidityとrigidospasticityの語法,折りたたみナイフ現象の解釈を挙げた.それらの分析を通じ,①腱反射亢進のみでは痙縮とはいえない.②相動性と緊張性の伸張反射は混在し,明確には分離できない.③痙縮筋の長さによっては,動きを伴わぬ持続的伸張でも反射が生じうる.④重度痙縮をrigidospasticityと称するのは一般的な語法とは言い難い.⑤折りたたみナイフ現象は痙縮とは異なる現象であると考察した.以上を踏まえ,Lanceに準じた私案を示した.痙縮とは,上位運動ニューロン症候群の一要素で,伸張反射増強の結果として腱反射亢進を伴って生じる,他動伸張時の速度依存性筋緊張亢進である.