著者
里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.465-470, 2016-06-18 (Released:2016-07-21)
参考文献数
29

革新的ニューロリハビリテーション技術を開発・実用化するには,神経科学研究の積み重ね,臨床的エビデンスの蓄積,知財マネジメント,医療機器としての製品化・薬機法承認・事業化が不可欠である.慶應義塾大学医工連携チームは,従来治療困難であった脳卒中後重度手指麻痺に対し,手指伸展企図時の運動野近傍の事象関連脱同期を頭皮電極で記録し,運動企図したと判断された際には,麻痺側手指を電動装具で伸展して体性感覚フィードバックを脳に返し,可塑性を誘導する治療システムを開発した.Proof of concept,first in man,症例シリーズ研究,効果機序解明を経て,企業と共同で製品化を進め,薬機法承認に向けた医師主導治験を計画中である.
著者
補永 薫 藤原 俊之
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.957-960, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
12

廃用症候群では,呼吸器系のみならず筋骨格系,精神系,循環器系など幅広い器官における変調をきたし,しばしば息切れ症状が発生する.息切れはさまざまな動作や活動に対する心理的,物理的なハードルとなり,患者のADL,QOLの低下因子となる.息切れのへの対処においては,その発生状況を詳細に把握したうえで,悪化の予防,教育,運動療法を行う.必要であれば補助具や環境整備も考慮する.整容動作など,一見負荷が少なそうにみえる動作でも,上肢の挙上位の保持が必要な動作では息切れをきたしやすいため注意が必要である.単一の介入のみで息切れ症状を克服することは困難であることが多く,総合的に介入を行っていく必要がある.

13 0 0 0 OA 摂食嚥下障害

著者
小口 和代
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.358-362, 2017-05-18 (Released:2017-07-31)
参考文献数
12

摂食嚥下障害は生命維持に直結する障害である.65歳以上人口あたりの肺炎死は,男性は女性の約1.7倍,食物による気道閉塞死は約1.3倍であり,摂食嚥下障害関連死のリスクは性差がある.男性では喉頭位置低下,最大舌圧低下が女性より若い時期から起きており,嚥下機能の予備能が女性より低い.壮年期から摂食嚥下障害の予防・啓発が必要である.当科で関わった誤嚥性肺炎の性別・年代別の退院時経口摂取獲得率に差はなかった.超高齢者においても個々にリハビリテーション適応を判断すべきである.また,高齢者の食生活の問題点として,買い物の問題を挙げるのはより女性に多かった.IADL低下に対する社会的な食生活支援は,超高齢社会の重要な課題である.
著者
先崎 章
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.298-304, 2016-04-18 (Released:2016-05-20)
参考文献数
18

軽度外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury,以下MTBI)は情報処理速度,注意,記憶の機能障害と関連していて,決して症状が軽いというわけではない.これらの損傷は受傷直後からあらわれ,数週間続く.スポーツによるMTBIでは,脳震盪後症候群の症状が1 カ月程度の間に急速に改善するが,一方,数%の例で長い期間,後遺症が持続する.交通外傷によるMTBIでは,かなりの割合で自覚症状が持続しうる.患者にMTBIは認知機能に低下を生じうるとの危惧を伝えると,検査の値の一部が低下傾向を示すという報告がある.改善がみられず,回復が遅れることに関連する要因として,微細な神経病理学的な損傷のほかに,受傷時の年齢,ある種の合併症,受傷前に患っていた精神医学的疾患や受傷による精神医学的疾患の発症や悪化,他の身体系統の損傷,心理社会的な要因などが考えられる.受傷後の脳神経外科的症状,精神医学的症状の両方を,MTBIによって直接生じる症状として扱うことが欧米のスタンダードになっている.
著者
大高 恵莉 大高 洋平 森田 光生 横山 明正 近藤 隆春 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8-9, pp.565-573, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

目的:システム理論に基づくバランス機能評価,Balance Evaluation Systems Test(BESTest)の日本語版を作成し,その妥当性を検証した.方法:翻訳と逆翻訳を経て日本語版BESTestを作成した.バランス障害群20 名及び健常群5 名(平均年齢71.2±13 歳,66.0±1.2 歳)に日本語版BESTest,Berg Balance Scale(BBS),国際版転倒関連自己効力感尺度(FES-I),Activities-specific Balance Confidence Scale(ABC Scale)を実施し,Spearmanの順位相関係数を求めた.またBBSと日本語版BESTestによるバランス障害群と健常群との判別能をROC解析により比較した.結果:日本語版BESTestはBBS(r=0.84),FES-I(r=-0.61),ABC Scale(r=0.63)と有意な相関を認めた(p<0.01).BBS及び日本語版BESTestのROC曲線下面積(AUC)は0.75,0.94(p<0.05)であり有意差を認めた.結論:日本語版BESTestは既存の評価法との妥当性を示し,BBSよりも軽度のバランス障害の検出に優れると考えられた.
著者
水尻 強志
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.207-211, 2015 (Released:2015-04-23)
参考文献数
23

In recent decades, natural disasters have increased markedly. A large-scale disaster can cause not only severe injuries but also stress-related diseases such as cardiovascular events. Particularly, the elderly and persons with preexisting disabilities are at greater risk for injuries, worsening disabilities and deaths in a disaster. The Great East Japan Earthquake 2011 revealed that rehabilitation medicine had some essential roles for people requiring assistance in a large-scale disaster. Firstly, in the acute phase immediately after the disaster, it was important to protect elderly and disabled people from dangerous situations. In this instance, even though significant numbers of vulnerable people requiring assistance remained in the affected area, there were insufficient sheltered locations available, because a large number of medical and welfare facilities were destroyed. Secondly, in the post acute phase after the earthquake, the medical rehabilitation needs for disaster-related disease such as cerebrovascular accidents increased. Finally, in the chronic phase of the disaster, the community based rehabilitation needs to prevent deconditioning syndrome had gradually grown. The aging of the Japanese population is a crucial issue. In this regard, disaster rehabilitation for vulnerable people is similar to comprehensive community care in many aspects. To support disaster victims, the Disaster Acute Rehabilitation Team (DART) and the Japan Rehabilitation Assistance Team (JRAT) have been proposed to take the lead in disaster rehabilitation. To support these and other ongoing efforts and to better prepare for the future, the Japanese Association of Rehabilitation Medicine and other related rehabilitation professional societies should provide specialized training on disaster rehabilitation.
著者
萩野 浩
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.898-904, 2018-11-16 (Released:2018-12-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

わが国の地域在宅高齢者の年間転倒発生率は10~25%で,施設入所者では10~50%程度である.高齢者の転倒による外傷発生頻度は54~70%程度で,骨折に至る症例は6~12%程度である.転倒の危険因子は身体機能の低下に起因する内的因子と,居住環境などに起因する外的因子とに分けられる.地域在宅高齢者の転倒を防止するためには,まず,対象の高齢者に関して転倒の危険因子を明らかにすることが必要である.単一の転倒防止介入は転倒防止に有効ではなく,個別の危険因子の評価と包括的介入が必要となる.施設入所者の転倒対策では,まず転倒事例の調査とその要因分析を実施する.転倒防止のための介入は在宅高齢者と同様に単一の介入は有効ではなく,個別の危険因子の評価と包括的な介入が必要である.
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.270-281, 2011-04-18 (Released:2011-05-09)
参考文献数
46
被引用文献数
9 2

Malnutrition often occurs in patients with disabilities. The prevalence of malnutrition in geriatric rehabilitation was higher than in hospital (50.5% vs 38.7%) according to MNA classification. Nutrition care management of patients with disabilities is often inappropriate. As nutritional status is associated with rehabilitation outcome, a combination of both rehabilitation and nutrition care management may be associated with a better outcome. This concept is defined as rehabilitation nutrition. Rehabilitation nutrition aims to assess patients according to the International Classification of Functioning, Disability and Health including nutrition status and to practice a rehabilitation nutrition care plan under adequate prognosis prediction. It is not enough for patients with disabilities to coordinate only their rehabilitation or clinical nutrition. Rehabilitation nutrition care management is important to improve their activities of daily living and quality of life. Sarcopenia is a syndrome characterized by progressive and generalized loss of skeletal muscle mass and strength. Primary sarcopenia is considered to be age-related when no other cause is evident, other than ageing itself. Secondary sarcopenia should be considered when one or more other causes are evident, such as activity-related sarcopenia, disease-related sarcopenia, or nutrition-related sarcopenia. Activity-related sarcopenia can result from bed rest, deconditioning, or zero-gravity conditions. Disease-related sarcopenia is associated with invasion (acute inflammatory diseases), cachexia (cancer, advanced organ failure, collagen diseases, etc.), and neuromuscular disease. Nutrition-related sarcopenia results from inadequate dietary intake of energy and/or protein. Treatment, including rehabilitation and nutrition care management, differs according to the causes of sarcopenia. No nutrition care, no rehabilitation. Nutrition is a vital sign for rehabilitation.
著者
菊地 章子 金子 聡一郎 高山 真
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.978-983, 2018-12-18 (Released:2019-01-21)
参考文献数
16

嚥下障害に対する鍼灸治療に関して,海外では有効性を示した研究報告が数々報告されている.鍼灸治療は基本的に患者の状態に応じて治療法を選択するオーダーメイド医療であるため治療の標準化は難しい.本邦では主に太渓と足三里という下肢の経穴に刺激を加えることで嚥下反射が改善するという研究が報告されている.一般の医療・介護施設で通常の鍼灸治療を行うことはさまざまな面で困難を伴うが,簡便に用いることのできる円皮鍼が有用となる可能性がある.鍼灸治療の作用機序はいまだ十分に解明されておらず,鍼灸が嚥下障害に対する治療法の選択肢として広く認識されるには,今後さらに研究を進め,臨床経験を蓄積することが必要である.
著者
緒方 徹
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.764-767, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
12

筋肉および神経への電気刺激による筋収縮誘導の知見は,すでに臨床の現場で活用されている技術となっている.健常者に対する筋力増強の効果はすでに確立しているが,下肢を中心とする運動器疾患での臨床成績への効果については報告にばらつきがあり,高いエビデンスとはなっていない.こうしたばらつきは,対象とする疾患の重症度や廃用の状態に影響されていると考えられる.最大随意収縮との比較(%MVIC)など刺激強度を確認する方法と,介入する筋肉の状態を把握したうえでの介入研究の蓄積が求められる.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.144-170, 2007-03-18 (Released:2009-11-06)
被引用文献数
6 1

加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)発症の分子機構の解明とその治療・予防法の開発…町田 修一 144骨格筋の再生機構とリハビリテーション…上 勝也,岩田 晃,浦井 久子 150廃用性筋萎縮とリハビリテーション…山内 秀樹 158ユビキチンリガーゼCbl-b による運動器の廃用性萎縮…山田 千晴,平坂 勝也,安井 夏生,二川 健 163
著者
渡邉 修 山口 武兼 橋本 圭司 猪口 雄二 菅原 誠
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.118-125, 2009-02-18 (Released:2009-02-24)
参考文献数
26
被引用文献数
5

厚生労働省は,2001 年から2005 年まで高次脳機能障害支援モデル事業を実施した.そのなかで,都道府県の実態調査をもとに全国の高次脳機能障害者数をおよそ30 万人と推定した.しかし,以後,高次脳機能障害者数を推計する報告は極めて少ない.そこで,東京都は,高次脳機能障害者支援施策を展開するうえで対象となる高次脳機能障害総数を把握する必要から,脳損傷者の発生数に関する調査および通院患者に関する調査を行った.方法:(1)年間の高次脳機能障害者発生数の推定:都内全病院(651 病院)に対し調査票を配布し,調査期間(2008 年1 月7 日~20 日)中に退院した都内在住の脳損傷者を調査し,性別年齢別に年間の高次脳機能障害者の発生数を推計した.(2)高次脳機能障害者総数推計:高次脳機能障害有病者数は,性別年齢別に平均余命に当該年齢の発生数を乗じ,これの合計を求めて都内の総数を算出した.結果:回収病院数は419で回収率は64.4 %であった.東京都内の1 年間の高次脳機能障害者の推計発生数は3,010 人,都内の推定高次脳機能障害者総数は49,508 人(男性33,936 人,女性15,572 人)であった.高次脳機能障害を引き起こす主な原因疾患は脳血管障害および頭部外傷であった.これらの疾患による高次脳機能障害の発生頻度を文献的に考察すると,本調査の結果は妥当な数値と考えられた.
著者
豊倉 穣 菅原 敬 林 智美 西村 葉子 村山 理恵
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.306-311, 2009-05-18 (Released:2009-06-01)
参考文献数
14

近年考案された注意障害の行動評価尺度 (BAAD,Behavioral Assessment of Attentional Disturbance) は,原則的に作業療法施行中の場面を作業療法士 (OT) が観察してスコア化する.今回,家庭での家族による評価を実施し,注意障害の評価に有用か検討した.脳障害者 (脳卒中,脳外傷など) 53 名を対象とした.OT,家族による評価合計点 (最高18 点) はほぼ一致し,級内相関係数も0.89と高値を示した.項目別に検討すると,6 個中5 項目では64 %以上で両検者のスコアが完全に一致したが,1 項目のみ43 %に留まった.以上より家庭での評価も「注意」障害の検出に有用と考えられた.
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.763-773, 2010-11-18 (Released:2010-11-29)

リハビリテーション医学・医療の社会的発展と公認への道…米本 恭三 763リハビリテーション医学教育・研究の歴史—Dr. Frank Krusen からのメッセージ—…千野 直一 768
著者
名倉 武雄
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.752-755, 2017-10-18 (Released:2017-12-04)
参考文献数
8

骨格筋の柔軟性は,肉離れや筋損傷の予防に重要であると考えられる.静的筋ストレッチは,骨格筋に対しさまざまな作用があるといわれているが一定の見解は得られていない.健常者14名を対象とし,超音波診断装置を用いて静的ストレッチの効果を検討した.ハムストリングに対する1分間の静的ストレッチ前後の中心腱移動距離,筋硬度変化を計測した.また,筋加温の変化についても検討した.その結果,男女ともストレッチ後30分間は中心腱移動距離が増加する傾向を認めた.筋硬度はストレッチ後男性のみ増加する傾向を認めた.筋加温による影響は明らかでなかった.超音波診断装置により,骨格筋に対するストレッチ効果を判定可能と考えられた.