著者
髙橋 美保 田口(袴田) 理恵 河原 智江
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.43-51, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
19

目的:本研究は,地域包括支援センター看護職が,虐待予防や健康保持のために認知症の妻を介護する高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげる支援のプロセスを明らかにすることを目的とした.方法:認知症の妻を介護する高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげた経験をもつ地域包括支援センター看護職7人を対象に半構造化面接を行い,夫介護者が自らの意思で水平的組織に参加継続するまでの支援を聴取した.得られたデータは複線径路・等至性モデリングの手法で分析し,支援のプロセスを示した.結果:地域包括支援センター看護職が高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげる支援のプロセスは4つの時期から構成された.第1期は,サービス利用の提案に消極的な夫介護者と支援関係の構築を図る時期であり,その後,妻の介護環境を整え信頼を得て,夫自身の健康の大切さを気づかせる第2期となる.第3期は,水平的組織参加の一歩を踏み出させ,メリットを感じてもらう時期となる.第4期に至ると,水平的組織への参加継続に向けて環境の再調整を行う時期となる.考察:認知症の妻を介護する高齢夫介護者を地域の水平的組織につなげていくためには,妻の状況に合わせ段階的に夫介護者の意識を変えていくこと,ならびにその段階に応じた支援の展開が必要であることが示された.また,男性の関心事に合う多くの種類の水平的組織を育成し,周知していくことの重要性が示唆された.