著者
髙野 秀之
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.87-106, 2013-10

本稿は機能主義言語学の入門研究である。ここで言う「機能主義」とは、Saussureが築き上げたヨーロッパ構造主義言語学の伝統における「一つの研究動向」のことを意味している。彼の後継者の業績の中から、特に、言語使用の目的、その目的が果たされる場面、言語使用の場面や状況において発現する意味(即ち、機能)に関心を寄せるものを選び、それらが言語体系の構造を記述するという目的を果たすために、どのような手段(方法)を講じているのかを概観する。 言語学という特定領域の歴史において、対立しているかのようにも見える二つの研究動向(即ち、構造主義と機能主義)がどのように扱われてきたのかを見直すことは、言語学史の研究のみならず、最新の言語理論を理解するうえでも有意義なことである。 本研究が扱う業績は、「コミュニケーション理論」、「場の脈絡という概念」、そして、言語学の主たる目的を意味の研究として定め、「意味はコンテクストの中で機能するという言語観」に限られる。それらはみな、行き過ぎた客観主義への反省に基づいて、「目的-手段」というモデルを共有している。