著者
魏 維
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.34-49, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
23

本研究は清末に行われた日本語学習活動を近代日本語教育史の一部として捉え,読解・翻訳を主とした日本語教育において行われた音声教育に注目する。具体的には言語教育の視点から清末に編集された日本語教科書や学習書に用いられた発音教育の方法などを考察の対象とし,清末の日本語音声教育の実態を探る。考察の結果,清末に行われた独自の日本語学習活動において,読解・翻訳という言語習得の目的に応えた和文漢読法が誕生したが,そこでは文字と音声が分断され,音声教育が軽視される傾向にあったことが明らかになった。また,清末の学校教育においては,反切法や直接表音法などが表音表記として使われたこと,日本人教師の登場により,清国人の方言訛りなどによる発音の混同が意識されるようになったことなどが明らかになった。