著者
鮎川 瑞絵
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.49-67, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
19

本稿では、ふるさと納税制度において、ふるさと納税の受け入れにかかる地方政府の事務処理等のコストが、地方政府間での税率決定および各地域の税収など地方財政に対しどのような影響を与えるかについて考察する。 本稿では、加藤・柳原(2022)と同様に,自分が居住している地域に対する愛着がある下で、二つの地方自治体がふるさと納税の返礼品を加味した税率を基に租税競争を行うモデルを考える。特に本稿では、地方自治体が他地域からのふるさと納税を受け入れる際には,事務処理等のコストを必要とするものとし。それが地方政府間で決定される税率や,財政状況等にどのような影響を与えるかについて検討している。 本稿で得られた主な結論としては以下のとおりである。第一に、加藤・柳原(2022)では、地方政府間の競争の結果得られる均衡点が人口の大きな地域から人口の少ない地域へとふるさと納税が行われる点しか存在しないことが示されていたが、本稿ではさらに、ふるさと納税が二地域間で行われない均衡も存在しうることが明らかになる。第二に、どの点が均衡となるかについては、地方自治体が負担するふるさと納税の受入に関する事務処理等のコストにも依存することが示される。