著者
タン チアユアン 鳥居 大地 小杉 直央 菊川 豪太 小原 拓
出版者
日本熱物性学会
雑誌
熱物性 : Japan journal of thermophysical properties (ISSN:0913946X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.134-140, 2010-08-30
参考文献数
25
被引用文献数
1

長鎖状ポリマー分子からなる液体中の熱伝導を決定する分子スケールのメカニズムについて,分子動力学シミュレーションによる観察結果に基づいて議論する.典型的なポリマー分子として直鎖アルカンを選択し,そのバルク液体に一定の温度勾配及び熱流束を誘起させる非平衡分子動力学シミュレーションを行った.鎖長が異なる6種類の直鎖アルカン分子からなる対臨界温度0.7の飽和液を対象として,熱流束の構成要素である分子間・分子内相互作用によるエネルギー伝搬の大きさを観測した.その結果,分子の鎖長が長いほど,分子内エネルギー伝搬がなす寄与が分子間エネルギー伝搬と比較して大きくなり,長鎖ポリマー液体中では分子内の強固な結合に沿った熱エネルギーの空間中の移動が熱伝導流束を構成する主な因子であることが明らかになった.