著者
鴻野 知暁
出版者
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
雑誌
言語情報科学 (ISSN:13478931)
巻号頁・発行日
no.10, pp.19-35, 2012

本稿は連体形や体言に後接し、そこで文が終止するというコソの文末用法について考察する。この用法は10C末頃から認められる。本稿では、平安初期から中期の作品を調査し、異文を併せて考えることによって、当該用法の発生を探った。上代で文の中間に現れていたコソは、中古には文末の述語内部にも生起するようになる。それに伴い、~ニコソアレという形式が頻繁に使われるようになる。当該用法は、これを下地として、~ニコソアレから(1)アレの省略、(2)ニの脱落という二つの変化によって生じたものであると結論される。係助詞の述語位置への進出は中世でさらに進行し、ヤランやゴサンナレ、ゴサンメレといった形式がこの背景の元で成立したと見られる。