著者
鵜木 秀明
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.305-316, 1988-09-01

種々の肝疾患を有するヒト生検肝組織74例に対し, モノクローナル抗休48-1を用いた光顕レベルでの酵素抗体間接法を施行し, その非A非B型肝炎特異性を臨床病理学的に検討した. ベルオキシダーゼ陽性反応は74例中13例に認められ, その内訳は, 非A非B型急性肝炎10例中8例(80%)・慢性肝炎15例中2例(13.3%), B型急性肝炎6例中2例(33.3%)・慢性肝炎18例中1例(5.6%)であった. また陽性細胞の小葉内分布パターンについては明らかな特徴像は認められなかった. さらに非A非B型急性肝炎における組織学的特徴像について検討した結果, Acidophilic condensation像の目立つ症例と比較的よく相関してベルオキシダーゼ陽性反応がみられた. また, 各種臨床免疫血清反応についての検討では, 特異的関連性は認められなかった. 今回の検討により, 本酵素抗体法は非A非B型急性肝炎の診断において特異性はないが, その有用性が認められた.(1988年5月14日 受付)