著者
小嶋 佑亮 鶴井 慎也 風晴 俊之 美原 盤
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-109, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】地域包括ケア病棟にはポストアキュートとサブアキュートの役割があるが、これからのわが国の診療提供体制から鑑みるとサブアキュートとしての役割が強く求められる。自宅から入院するサブアキュート患者は、何らかの原疾患および障害を抱えていることが多い。 これらの患者に対し入院中理学療法が介入し入院前のADL状況と変わらない状態になったにもかかわらず、自宅復帰できない場合は少なくない。そこで今回、非自宅復帰者の特性について比較・検討した。【方法】2017年6月から2018年12月に地域包括ケア病床に入院し、理学療法士が介入した275名のうち、自宅から直接入院した患者103名を対象とした。対象を自宅復帰と非自宅復帰の2群に分類し、入棟時・退棟時FIM、入院前のADL状況、入院前主な移動手段(歩行・車椅子)、入院目的疾患を調査、比較した。また自宅転帰できなかった患者の要因を調査した。【結果】入棟時・退棟時FIMにおいて運動項目および総点数は非自宅復帰群で有意に低かったが、両群ともFIM の有意な改善を認めた。入院前のADLにおいて非自宅復帰群は、なんらかの介助を要する患者が84.6%と自宅復帰群の50.0%に比較し有意に多く、入院前の移動手段が介助歩行、車椅子であった患者の割合も非自宅復帰群が53.8%で、自宅復帰群34.4%に比較し有意に多かった。 なお、非自宅復帰群は内科系疾患がほとんどで、新規に麻痺などの機能障害を呈した患者はいなかった。自宅転帰できなかった患者のうち、76.9%は家族の受け入れの問題があった。【考察】当該病棟に自宅から直接入院してくるサブアキュート患者のうち、入院前からADL動作能力が低い患者は、在宅転帰しにくいことが示された。理学療法士の努力によりADL能力の改善が図られても、家族の受け入れにより自宅転帰が阻害される。自宅復帰を促進するには家族への働きかけが重要である。