著者
鶴身 暁子 田中 昌博 川添 蕘彬
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-80, 2007-03-25 (Released:2017-05-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究では身体活動時における顎口腔機能の役割を明らかにするために,動的な咬合接触および咬合接触圧分布と筋電図の同時計測を行い,健常有歯顎者のベンチプレス動作時の咬合接触と筋活動について検討した. 被検者は健常有歯顎者5名を選択した.被検者利き手側の側頭筋前部,咬筋,顎二腹筋前腹を対象筋とした. 咬合接触および咬合接触圧分布と筋電図の同時計測には,当講座で開発した同時計測システムを用い,咬合接触および咬合接触圧分布の測定には咬合接触圧用特注センサシートを用いた. 被検者に最大随意咬みしめおよび最大随意開口を指示し,3回の試行の咬合接触圧の最大値および筋電図包絡線の最大値を平均し,その値を個人の100%の値とした. 被検動作はベンチプレス動作とし,光による単刺激の合図に,可能な限りすばやくバーベルを挙上するよう指示した.被検者の最大挙上重量を100%とし,各重量時の側頭筋前部,咬筋および顎二腹筋の筋電図包絡線最大値に対する比率を計測したところ,ベンチプレス動作と顎口腔機能の関連において以下の結論を得た. 1.すべての被検者で約95%重量時において,咬筋筋電位の発現が20%を超えた. 2.約50%以下の重量時においては,全被検者で側頭筋前部および咬筋筋電位の発現が10%未満であった. 3.顎二腹筋の筋活動量は最大随意開口時とほぼ同程度であった. 4.すべての被検者の全試行において,最大咬みしめに至るような咬合接触値は認められなかった. 5.身体活動時において,挙上重量が個体の限界に近いほど,咀嚼筋が協力的に作用し,咬合接触の有無にかかわらず,下顎の固定に関与していることが示唆された.