著者
鷲見 幸子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.51-61, 1970-01-20 (Released:2009-11-16)
参考文献数
13

963年より岐阜雑系, Donryu系, Fisher系, Wistar系のラットについての無菌強制哺乳実験を実施し, その実験回数は13回に及んだ。 その間飼料を改善し, A・B・Cの3飼料を作製し, これら飼料による強制哺育成功率, 発育, 妊娠率, 歯牙異常発生頻度, 腸捻転の頻度を検討した。 この業績は日本において無菌繁殖の基盤を確立することに寄与しえたものと考える。 業績の主要なる点を挙げれば次のようである。1) 蛋白含量の少ないA飼料の無菌強制人工哺乳の成功率は13. 1%であったが, 蛋白量の多いC飼料を使用し87. 5%という高い成功率に達せしめた。2) C飼料による無菌強制人工哺乳成功例の♀の無菌妊娠率を88%という高率に達せしめえた。3) 無菌強制人工哺乳成功例のうち, 岐阜雑系およびDonryu系に属するものの中に歯牙異常が出現した。 それ故にこの種の系統は無菌動物化に不適当であることを明確にした。4) 腸捻転症は無菌ラットに特異な所見であるが, C飼料によってその発現頻度を低減せしめ, 第2代以後代を重ねることによってその発現を皆無ならしめた。5) BおよびC飼料哺育動物の強制人工哺乳期間中に帝王切開摘出胎仔の生肝を投与する方法は無菌繁殖を成功させることに寄与しえたものと思う。 6) 無菌強制人工哺乳は, 切歯の萠出や開眼に影響を与えるものではないことを明らかにしえた。 但し, 無菌環境下における自主的な摂食および水飲は飼料により影響される傾向がみられた。