著者
相沢 秀俊
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.240-244, 1969 (Released:2009-11-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

トリフェニールメタン系食用色素5種とウシ血漿アルブミンの結合を, 最大結合数および結合のΔFの点で調べ, その化学構造との関係を求めた。最大結合数はpHの上昇によって減少するものと, pHの変動と増減が一定の方向を示さないものに分かれた。前者に属するものにO-位にスルホン基を有するブリリアントブルーとファーストグリーンがある。後者にはギネアグリーン, ライトグリーン, アシドバイオレットが入る。また, 中心炭素のフェニール基に置換墓のないギネアグリーンに対し, P-位にスルホン基をもつライトグリーンは結合のΔFが減少する。これはスルホン基の結合力に対するマイナス効果で, 他の系統の色素の結果とも一致する。しかしO-位にスルホン基をもつブリリアントブルーでは結合力に余り差がない。この点スルホン基の位置も関係することが判る。またこの色素の場合, 結合力に差がなくともO-位のスルホン基のため最大結合数の減少することもある。さらにブリリアントブルーのP-位に水酸基を入れるとファーストグリーンになるが, 水酸基の導入によって結合数は増すが結合のΔFが減少した。アシドバイオレットは実験条件で陽荷電しているためか, 結合数は少なかった。一般的にはこれらの色素は結合数が少ない。特に低い濃度条件の結果は少なかったが, 結合の少ない場合は結合のΔFは大きくなる。これは色素のタンパク質に対する付き方および染着色素間の相互作用によると考えられる。また結合のΔFは-6, 300~-7, 500 cal/mole程度で, 実験条件でかなり差異があった。
著者
藤林 真美 神谷 智康 高垣 欣也 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.129-133, 2008 (Released:2009-01-27)
参考文献数
21
被引用文献数
12 9 4

現代人の多忙な生活の中で,簡便で即効性のある栄養補助食品が求められている。本研究では,GABAを30 mg含有したカプセルの経口摂取によるリラクセーション効果を,自律神経活動の観点から評価することを試みた。12名の健康な若年男性(21.7±0.8歳)を対象に,GABAとプラセボカプセルを摂取させ,摂取前(安静時),摂取30分および60分後の心電図を胸部CM5 誘導より測定した。自律神経活動は,心拍のゆらぎ(心電図R-R間隔)をパワースペクトル解析し,非観血的に交感神経活動と副交感神経活動を弁別定量化した。その結果,GABA摂取前と比較して,総自律神経活動は摂取30分後 (p<0.01) および 60分後 (p<0.05)に,副交感神経活動も摂取30分後 (p<0.05)に顕著な上昇を示した。これらの結果から,30 mgのGABA経口摂取は,自律神経系に作用しリラクセーション効果を有する可能性が示唆された。
著者
福井 健介 桑田 五郎 今井 正武
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.273-278, 1997-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
20
被引用文献数
5 3

10%食塩水処理により脱脂大豆から脱フィチン酸大豆タンパク質 (PFS) を作成した。成長期の雄ラットに20%のPFS, 分離大豆タンパク質 (SPI) またはCaseinを含む食餌を与え, ミネラル吸収性に及ぼす大豆タンパク質のフィチン酸除去の影響を検討した。食餌中の総リン (P) 量は無機P (P1) を添加して0.59%になるよう調節した。また, PFS食中のPがほとんど外因性のP1であったため, P1添加量を0.59%にした群をさらに設定した (各SPI-IおよびCasein-I群とした)。結果概要を以下に示した。1) カルシウム (Ca) 吸収率に及ぼす大豆タンパク質のフィチン酸除去の効果は, 1%程度の上昇傾向にとどまった。2) 一方, マグネシウム (Mg) および亜鉛 (Zn) の吸収率においては, 大豆タンパク質のフィチン酸除去により5~10%程度の有意な改善または改善傾向がみられた。3) ミネラル吸収に関するCasein, SPIおよびPFSの関係は, 食餌中のPの合わせ方の違いによって影響を受けなかった。またP1量の多い群でミネラル吸収率が低くなる場合が多くみられた。4) SPIのCa, MgおよびZnの吸収率は, Caseinと同等あるいは上回る数値であった。これらの結果より, 大豆タンパク質のミネラル吸収率はCaseinと同等であるが, フィチン酸を除去することでMgおよびZnの吸収性がさらに改善される可能性が示唆された。
著者
藤原 葉子 秋元 浩二 二宮 伸二 坂口 靖江 脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.221-228, 2003-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

ビタミンC (アスコルビン酸), L-システインおよびビタミンE (コハク酸d-α-トコフェロール) の併用による色素沈着抑制効果を, 褐色モルモットに経口摂取して検討した。背部を除毛後, 紫外線 (UV-B) を照射した褐色モルモットの皮膚色はメラニン色素の沈着によりL*値 (明度) が低下したが, ビタミンC単独摂取ではL*値の上昇傾向を示し, ビタミンCとL-システインの併用またはビタミンC, L-システインとビタミンEを併用することにより, 紫外線照射によるL*値の低下はいずれも有意に抑制された。紫外線照射部の表皮ではDOPA反応陽性のメラノサイト数が増加したが, ビタミンCとL-システインの併用またはビタミンC, L-システインとビタミンEの併用では, 対照群に比べて有意に減少した。L*値の低下抑制効果およびDOPA反応陽性メラノサイト数増加の抑制効果の程度は, いずれも (ビタミンC+L-システイン+ビタミンE群)>(ビタミンC+L-システイン群)>ビタミンC群であった。以上の結果から, ビタミンやシステインを組み合わせることによって, 経口摂取によってもUV照射によるメラニンの沈着を抑制できることがわかった。
著者
小田 裕昭
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.137-149, 2007-06-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

必須アミノ酸, 非必須アミノ酸という命名法の問題点は古くから指摘されてきたが, 特に非必須アミノ酸の定義には曖昧さもあり, 厳密にすればするほど複雑になってしまう。必須アミノ酸の必須性は, 主にその炭素骨格に依存しているが, 必須アミノ酸を生体内で合成するには長いステップを必要とするため, 進化の過程でその合成系が失われたと推測される。原核生物, 植物, 菌類は, すべてのアミノ酸合成能をもっているため必須アミノ酸をもっていない。一方, ヒトを含むすべての動物から原生生物の細胞性粘菌は必須アミノ酸をもち, その必須アミノ酸はほとんど同じである。原生生物の進化のあるときに10種ほどのアミノ酸合成能が一斉に失われたようである。ゲノム情報からもこのことが裏付けられる。原生生物の進化過程の限られた時期に複数のアミノ酸合成能を欠落させた原因は不明である。
著者
斎藤 雅文 堀 由美子 中島 啓
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.69-75, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

人工甘味料の摂取が糖代謝に及ぼす影響を明らかにすることは,糖尿病患者や減量に関心のある人々にとって重要である。しかし,わが国では人工甘味料に関する疫学研究が進んでおらず,その摂取状況の把握と評価は困難であり,適否を判断することが難しい。そこで我々は,国内外の文献検索データベースから人工甘味料と肥満や糖尿病に関する論文を抽出し,研究デザインごとに内容を整理することとした。観察研究では,人工甘味料入り飲料の飲用習慣が肥満や糖尿病の発症に影響すると報告されており,介入研究では,人工甘味料の負荷は糖代謝へ影響しないこと,ショ糖を人工甘味料に代替した食事は体重や糖代謝に影響しないことが報告されていた。これらは欧米人を対象としたものであり,結果についても一様ではなかった。今後は,人工甘味料に関するわが国でのエビデンスを蓄積するために,日本人での記述疫学や観察研究などによる情報の集積が求められる。
著者
関野 由香 柏 絵理子 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.101-106, 2010 (Released:2010-07-22)
参考文献数
20
被引用文献数
7 4

社会環境の変化にともない, 夜間生活が一般化してきている。本研究では, 夜遅い時刻の食事摂取が, 食事誘発性熱産生 (DIT) に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。喫煙習慣のない健康な女子大学生 (平均年齢20.5±1.2歳) 33名を対象に, 一律500 kcalの食事を, 7: 00, 13: 00, 19: 00に摂取する朝型と, 13: 00, 19: 00, 1: 00に摂取する夜型の2種類設定し, クロスオーバー法にてDITを測定, 評価した。朝型では7: 00の食事のDITが, 他の時刻の値に比べて有意に高く (p<0.05), 夜型では深夜1:00の食事のDITが, 他の時刻の値に比べて有意に低くなった (p<0.01) 。3食分のDITを合計した3食合計DITは, 夜型が朝型より有意に低くなった (p<0.01) 。このことから, 朝食を欠食し夜食を摂取した夜型化は, DITの低下により1日のエネルギー消費量を減少させ, 肥満の一要因になる可能性が示唆された。
著者
喜多村 尚 小原 郁夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.291-296, 2009 (Released:2010-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
1

基本4味に対する味覚感度の月経周期における変動については明らかにはなっていない。本研究は, ヒトの月経周期による基本4味 (甘味, 酸味, 苦味, 塩味) に対する味覚感度の変動について検討した。卵胞期と黄体期が明らかである基礎体温パターンを示した11名の健常女子大生を, 被験者とした。味覚感度の測定部位は, 舌の前2/3の茸状乳頭が散在し, 鼓索神経支配を受けている舌の7カ所とした。ついで, 舌の先端部中央における4基本味に対する味覚感度の測定を行った。甘味の味覚感度は, 卵胞期および黄体期が月経期および排卵期より上昇し, 酸味の味覚感度は, 黄体期が排卵期より低下した。しかし, 塩味および苦味の味覚感度は, 月経周期による変動は観察されなかった。これらのことから, 甘味は, 代謝リズムが急激に変わる月経および排卵期に味覚感度が低下するが, 基本4味すべてにおいて卵胞期と黄体期の間で変動がないことが示唆された。
著者
山下 広美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.171-176, 2014 (Released:2014-08-25)
参考文献数
26

酢酸は, 生体において空腹時に脂肪酸からβ酸化により生成される内因性の成分であり, 骨格筋などで生体燃料として利用される。一方, 外因性に酢酸を摂取すると酢酸は容易に血中に移行し組織に速やかに取り込まれた後, その代謝過程でAMPを生成し細胞内のAMP/ATP比を増加させてAMPキナーゼ (AMPK) を活性化させる。2型糖尿病の病態モデル動物に酢酸を継続的に摂取させると, 肥満が抑制され耐糖能を改善させる。また肝臓において脂肪合成関連遺伝子の転写量を低下させることから, 酢酸は脂肪合成を抑制するように作用すると示唆される。その他エネルギー消費割合の増加, 白色および褐色脂肪組織においては脂肪滴肥大化の抑制が見られる。以上より酢酸は空腹時には内因性の成分として生成され生体燃料として利用されるが, 摂食時に酢酸を摂取すると脂肪合成の抑制による肥満の抑制, さらに肥満に起因した2型糖尿病予防効果をもたらすと示唆される。
著者
岡崎 由佳子 片山 徹之
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.151-156, 2005-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
46
被引用文献数
4 4

フィチン酸は, ミオイノシトールに六つのリン酸基が結合した化合物であり, そのリン酸基が無機質の吸収抑制に関与すると考えられ, 一般的に抗栄養因子と位置付けられている。一方, ビタミン様物質であるミオイノシトールは, 抗脂肪肝作用を有することが知られている。著者らは, フィチン酸のイノシトール骨格に着目し, フィチン酸がミオイノシトールと同様に抗脂肪肝作用を有することや, フィチン酸によるこの効果が現実に摂取しているレベル付近で発揮されることを明らかにした。また, ミオイノシトールとフィチン酸が共通して抗がん作用を有することも報告されている。さらに, 最近の研究からフィチン酸が哺乳動物細胞内における常成分で, 哺乳動物の脳に結合タンパク質が存在し, 細胞内小胞輸送に関与している可能性が考えられている。著者らは, これらの結果からフィチン酸が栄養的にみてビタミン様物質の前駆体あるいはビタミン様物質そのものとして機能しうるのではないかと考えている。
著者
齋藤 衛郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.219-231, 2008 (Released:2009-01-27)
参考文献数
90

ドコサヘキサエン酸(DHA)に代表されるn-3系高度不飽和脂肪酸は,特有な生理効果が明らかとなっているが,化学構造上きわめて酸化しやすく,多量摂取した際の生体内での過酸化が懸念される。われわれは,「健常な生体内では,高度不飽和脂肪酸に対する巧妙な過酸化脂質の生成抑制と解毒・排泄機序が存在するために過酸化脂質の蓄積が抑制される」との仮説を立て,最も不飽和度の高いDHAに着目し,ラットをモデル動物として研究を開始した。その結果,組織過酸化脂質(LPO)はDHA投与量依存的に増加するが一定レベル以上の投与ではプラトーになる,過酸化されやすさの指標Peroxidizability Indexから計算されるほどには増加しない,多量投与でもリポフシン(lipofuscin)のような脂質過酸化終末産物の生成がみられない,かつ,組織細胞傷害も認められない,こと等を観察した。ここに本仮説の妥当性を確信し,その解明を進めるに至った。まず,抗酸化機序としては,1)抗酸化剤としてのビタミンE(VE),アスコルビン酸(AsA),グルタチオン(GSH)の必須性,2)DHA投与によるAsAとGSHの生成亢進,これに伴うVEの抗酸化性増加,3)組織ごとに異なるDHAの取り込みと,それに伴う細胞膜脂質不飽和度の変化の重要性,4)組織ごとに異なるリン脂質種への取り込みの変化とフォスファチジルエタノールアミンへの優先的取り込みに伴う酸化抵抗性増加の可能性,5)DHA多量摂取では,一過性に組織中性脂肪への取り込み増加とそれによる酸化抵抗性の上昇,等を明らかにした。一方で,脂質過酸化終末産物の生成や細胞傷害等の有害作用の惹起には至らないことから,LPOの蓄積抑制と解毒・排泄機序の解明を試みた結果,1)脂質過酸化分解生成物である反応性アルデヒド類と高分子化合物とのシッフ塩基形成抑制と終末産物リポフシンの生成抑制,2)有害なアルデヒド類のグルタチオンとの抱合体化と,その代謝物としてのメルカプツール酸の尿中への排泄亢進を見出した。抱合体の排泄に至る過程では,肝臓では膜輸送タンパク質としてのABCトランスポーターファミリーの一つ,MRP3(ABCC3)の介在を初めて見出した。また,アルデヒド類のヒスチジン付加体の尿中排泄亢進,3)アルデヒドの代謝に関わるアルデヒドデヒドロゲナーゼやアルドースレダクターゼの活性亢進,等が明らかになった。
著者
鴻巣 章二 柴生田 正樹 橋本 芳郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.186-189, 1967-09-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

採取直後のアサリでは採取時期や個体の大きさの相違によって, 有機酸含量に大きな差はみられなかった。コハク酸含量は常に40mg%以下で, 文献値に比ベて著しく低かった。しかし, 採取後貝を空中に放置すると, コハク酸は時間経過とともに増加してゆき, 特に夏期に増加量が多かった。他の有機酸の変化は少なかった。数種の貝類のコハク酸含量も, 文献値に比ベてかなり低かった。
著者
上西 一弘 江澤 郁子 梶本 雅俊 土屋 文安
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.259-266, 1998-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

健康な成人女性9名を対象に出納法による食品および食品別のカルシウム吸収比較試験を行った。被験者にカルシウム約200mgを含む基本食を3日間摂取させた後, 基本食にカルシウム約400mgを含む添加食を加えた試験食を4日間摂取させた。添加食は牛乳, 小魚, 野菜の3種類のいずれかであり, 1月経周期以上の間隔をおいてランダムに摂取させた。試験期間中は毎日, 採尿, 採便を行い, 尿中, 便中および食事中のカルシウム量を測定し, カルシウム出納を算出した。また, 各試験開始時と試験食移行時, 試験終了時に採血を行い, 血清のカルシウム関連物質を測定した。その結果, カルシウム出納は基本食摂取時にはマイナスとなったが, 試験食摂取時にはプラスとなった。各食品および食品群別のカルシウム吸収率は牛乳39.8%, 小魚32.9%, 野菜19.2%となった。牛乳は, 乳糖およびCPPがカルシウム吸収を促進し, 野菜は, 食物繊維やシュウ酸が吸収を阻害していると考えられる。血清のカルシウム関連物質では, 血清カルシウム, 副甲状腺ホルモン, カルシトニンには試験期間中変化はみられなかったが, 1,25(OH)2D3は基本食摂取後に上昇がみられ, 試験食摂取後には元に戻っていた。これは低カルシウム食に対する反応と考えられる。
著者
永井 成美 山本 百希奈 御堂 直樹 磯村 隆士 脇坂 しおり 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.279-285, 2010 (Released:2011-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

本研究の目的は, スープ摂取後の安堵感(心がほっと安らぐ感覚)の定量的評価を行い, スープの種類による安堵感の違い, および安堵感に影響を及ぼす心理的, 生理的要因を検討することである。予備試験では, 訓練された6名のパネルによる官能検査を4種類のサンプル(コーンポタージュ[90 kcal], チキンコンソメ[43 kcal], および等エネルギーで風味に乏しいコーン・プラセボ, チキン・プラセボ)について行い, 各サンプルの特性を位置づけた。本試験では, 前夜から絶食した11名の女性(22.6±0.3歳)に, スープサンプルを朝食として, 異なる4日間にランダムな順序で負荷した。安堵感スコア, 満腹感スコア, 心拍数, 交感・副交感神経活動(心拍変動解析による), エネルギー消費量(呼気ガス分析による)を, スープ摂取前および摂取1時間後まで経時的に測定した。サンプルへの嗜好スコアは, コーンポタージュ, チキンコンソメの順に高く, 両プラセボで最も低かった。スープ摂取後の安堵感は, コーンポタージュでは他のスープサンプルより有意に高値を示した。安堵感は, 嗜好スコア, 満腹感スコア, 心拍数と正相関し, 副交感神経活動と負の相関を示した。本結果から, コーンポタージュ摂取後の高い安堵感には, スープへの嗜好性, および摂取後の満腹感と心拍数の上昇が関連していることが示唆された。
著者
岡村 保 松久 次雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.236-241, 1968-11-30 (Released:2009-11-16)
参考文献数
8

東京, 名古屋, 京阪神を主とした全国各地の水道水のフッ素含有量をしらべた。 フッ素含有量の高かったのは愛媛県西条市1.080p. p. m., 沖縄県宜野湾市1.008p. p. m., 大阪市の一部0.840p. p. m. などであり, 東京都も一部0.300p. p. m. 以上の値をしめすものがあった。 大半は0.200p. p. m. またはそれ以下で, 最低値は, 愛媛県久万町の0.016p. p. m. であるが, ほかに岩手県下数都市の水道水はすべて0.100p. p. m. 以下で低値をしめした。従来食品からのフッ素摂取量については余り問題にされていなかったが, 日本人は毎日いろいろの食品から5~10mgのフッ化物を摂取しており, 本実験の結果から飲料水からのフッ素摂取量に比べて10~20倍の値になっており, 日本人のフッ素摂取量は過剰であっても少なすぎることはないものとおもわれる。このような点から, 水道水のフッ素化は食品面から再検討すべきではないかと考えるにいたった。
著者
丸谷 宣子 白杉(片岡) 直子 岡本 裕子 谷口 智子 服部 美穂 中尾 百合子 津久田 貴子 早崎 華
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.323-332, 1998-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

抗酸化剤無添加の精製エゴマ油を180℃で10時間加熱し, 経時的に油のAV, POV, CV, p-An. V, Toc量と脂肪酸量の変化を調べた。対照試験としてダイズ油についても同様に測定し, 両者の熱安定性を比較した。また, コットンボールを用いて加熱時のモデル食品成分添加の影響を調べた。1) 180℃, 70分までの短時間加熱では, ダイズ油に比べてエゴマ油の劣化は若干進んでいたが, α-リノレン酸の残存率も90%以上であり, 栄養的にも食品衛生上も支障があるほどではなかった。2) 180℃, 10時間加熱においては, 加熱時間が長くなるにつれ, ダイズ油に比べてエゴマ油の劣化が著しく, CVが50を越えるのがダイズ油が10時間後であるのに対し, エゴマ油は約5時間後であった。エゴマ油は着色も著しく, 10時間後にはAVは0.20と低かったが, CVは131.0, p-An. Vは242.4に達した。3) コットンボールを用いて, エゴマ油とダイズ油の水添加加熱時の熱安定性を比較した結果, 1時間以内では, エゴマ油はダイズ油に比べAV, CV, p-An. V, POVともやや上昇したものの, 食品衛生上問題になるほど酸化は進まなかった。4) エゴマ油の熱酸化は第二塩化鉄により促進された。グルコースや水の添加によっては若干酸化が進んだ。逆に, グリシン添加時はPOV, CV, p-An. Vの値が減少した。これは, アミノ酸自身の抗酸化性と, アミノカルボニル反応によって, 油中に生成されたカルボニル化合物が消費されたこと, さらに生成されたメラノイジンが抗酸化性を示したことなどが考えられた。
著者
奥 恒行 田辺 賢一 渡邊 有希 尾野 春子 成瀬 真理 中村 禎子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.233-240, 2007-10-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

本研究ではフラクトオリゴ糖 (FOS), ラクチュロース (LAT), ガラクトシルスクロース (GS) およびイソマルトオリゴ糖 (IMO) を用いて難消化性オリゴ糖の性状の違いがCaならびにMg代謝に及ぼす影響を比較・検討した。飼料組成は各オリゴ糖10%添加飼料とし, 対照にはスクロースを用いた。Wistar系雄ラット (3週齢) を1群6匹で44日間個別飼育し, 6週間後に出納実験を行った。なお, 給餌量は同一になるように軽い制限給餌とした。CaおよびMgは原子吸光法により測定した。尿中デオキシピリジノリン (DPD) はEIA法を用いて測定した。消化されないFOSおよびLATは腸管からのCaならびにMg吸収を促進し, 大腿骨中のCaおよびMg含有量を増加させた。しかし, 部分消化性のGSの効果はやや弱く, 消化性のIMOの効果はさらに弱かった。消化されにくいオリゴ糖は尿中DPD排泄量も低下させた。以上の結果, 難消化性オリゴ糖のCaおよびMg代謝への影響は, オリゴ糖の種類, 特に消化性の低いものほどCaおよびMgの腸管からの吸収を促進することが明らかになった。
著者
奥 恒行 藤田 温彦 細谷 憲政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.301-303, 1983 (Released:2010-02-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2

Eight healthy subjects (average age 27. 5 years old) were orally administered 200 ml of the control solution (containing 50 g of glucose) or the test solutions (containing 50 g of glucose and 5 g of glucomannan or cellulose), and compared with the suppressive effect on the enhancement of blood glucose level.Glucomannan delayed the intestinal absorption of glucose and could significantly suppress the maximal level of blood glucose, but cellulose could not. Addition of pullulan of 5 or 10 g to glucose solution also did not show the suppressive effect on blood glucose level.
著者
嶋津 孝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.307-316, 2003-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
40

現代日本は空前の飽食時代を迎えており, 遺伝的体質と相まって, 容易に肥満をはじめとする生活習慣病に罹る脅威にさらされている。これを予防するには, からだのエネルギー消費の大半を占める基礎代謝量を増大させて, エネルギー摂取と消費のバランスを図ることが必要である。本総説では, ヒトならびに高等動物のエネルギー代謝を制御している体内メカニズムを, (1) エネルギー消費を支配している交感神経系の重要性ならびにその活用, (2) 産熱器官でのエネルギー消費を司るミトコンドリアの脱共役タンパク質 (UCP) ファミリーの働きと生理的役割, (3) エネルギー消費の主たる実働器官としての骨格筋におけるグルコースならびに脂肪酸の代謝に及ぼすレプチン (肥満遣伝子産物) の中枢作用と, その新しいシグナル伝達系, そして最後に (4) 食生活上での実用的側面として, エネルギー消費を活性化する香味食品成分の探索と効果について, 筆者らの実験成績を交じえながら論述した。
著者
大久保 剛 伊東 利博 日比野 英彦
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.305-309, 2009 (Released:2010-01-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ポリコサノールは, 米糠, サトウキビ, 小麦などの植物ワックスをけん化分解して得られる炭素数20以上の高級脂肪族アルコールの組成物である。ポリコサノールは, 血清脂質の低減作用や肝機能改善作用が数多く報告されており, 海外では医薬品としても使用されている。今回われわれは, 健康な成人男性8名に対して, 1日あたり40 mgのポリコサノールを6週間にわたり摂取した結果, 摂取開始前に比べて有意差をもって飲酒時 (アルコール1単位, エタノール量で約25 g) の血中アセトアルデヒド濃度を低減させることを確認した。具体的には飲酒180分後の血中アセトアルデヒド濃度が摂取前では平均13.0 μmol/Lだったのが, 摂取後には被験者全員が検出限界 (5 μmol/L) 以下になった。このことは, アセトアルデヒドによりもたらされる二日酔い防止効果などが期待される。