著者
麻生 健人
出版者
松山東雲女子大学・松山東雲短期大学
雑誌
松山東雲短期大学研究論集 (ISSN:03898768)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.51-64, 1992-12

明治以後,日本の女性の名前は急速に漢字で表記される方向に向かい,今に至っている。その変化の中で,名前に用いられる漢字個々の意味,またそれが組み合わされてできた名前自体が表す意味は命名者によってどのように意識されてきたのか。その解答を得るため,東雲短期大学の卒業生を中心に名前の調査を行った。その結果,女性に対する名付けという行為は,個人的な行為であるが,その一方で社会的に有形無形の大きな制約を受けていることがわかった。その現れとして,女性名特有の型というものに強くとらわれていること,名前に使用される文字の種類が一定の範囲に限られていることなどが調査結果から明らかになった。その一方で,個性的な名前を付けようとする試みは続けられ,文字の組み合わせを工夫する,漢字の音読化を進めるなど,名前に多様性を与えるための,新しい名付けの傾向も現れてきている。