著者
坪田 朋子 黒木 薫 菊地 伸 渡邉 好孝
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb0599-Eb0599, 2012

【はじめに、目的】 東日本大震災発生から約8ヶ月間,宮城県理学療法士会(以下,県士会)では災害対策本部を立ち上げ,被災住民および会員の支援活動を展開している.誰もが初めて経験する甚大な被害に対して,理学療法士として何を求められ何をすべきか,試行錯誤を繰り返している.行政機関や県士会会員の多くが被災し混乱する中で,全国からの理学療法士ボランティアを受け入れ,関係各団体と調整を行いつつ被災住民のニーズに合った活動をコーディネートすることは困難を極めた.また今回は日常的な医療・保健福祉の連携の充実度が災害時の支援体制構築に大きく影響した.そこで災害対策本部の活動を報告するとともに,今我々がすべきことについて考察する.【方法】 平成23年3月15日 災害対策本部設置.本部長・副本部長任命.会員の安否確認を開始.3月17日 県士会ホームページによる情報発信開始.3月20日 宮城県健康推進課からの支援要請受託.3月23日 県士会ボランティア募集開始.3月24日 理事会・災害対策委員会開催.災害対策本部内に事務局・住民支援班・会員支援班を設置.3月25日 県内各地の保健福祉事務所所属理学療法士からの情報収集開始.避難所巡回開始.4月1日 会員支援情報発信ツールとして「G!MPニュース」発行.4月4日 県士会ボランティア派遣開始(気仙沼市・南三陸町・石巻市・多賀城市).4月16日 県士会ボランティア研修会開催.4月27日 宮城県・日本理学療法士協会(以下,協会)・宮城県作業療法士会との支援検討会議開催.5月6日 協会ボランティア派遣開始.5月12日 災害対策本部内に活動支援班設置.5月26日 大崎市・栗原市への県士会ボランティア派遣開始.5月31日 多賀城市への県士会ボランティア派遣終了.7月1日 石巻市渡波地域包括支援センターからの支援要請受託.7月2日 大崎市・栗原市への県士会ボランティア派遣終了. 9月2日 気仙沼市・南三陸町への県士会ボランティア派遣終了.9月10日 協会ボランティア派遣終了. 10月1日 活動報告会開催. 11月1日現在石巻市において支援活動継続中.【倫理的配慮、説明と同意】 本報告はヘルシンキ宣言に基づいて作成し,支援活動状況の撮影および画像の使用,学会などでの発表については本人に十分な説明を行い,同意を得ている.【結果】 平成23年11月1日現在,県士会登録ボランティア154名.多賀城市のべ41人,石巻市のべ205人,気仙沼市・南三陸町のべ231人,大崎市・栗原市のべ18人を派遣.【考察】 今回,県士会災害対策本部として本部長・副本部長以下,事務局・住民支援班・会員支援班・活動支援班を設置したが,独立した渉外および広報の部門が必要であったと思われる.災害時には多くの支援団体が次々と現地入りされるため,渉外がそれらの連絡・調整と現地コーディネーターからの情報収集に専従することで,効率の良いボランティアの人員配置や各団体の専門性を活かした分業・協業の策定などを行うことができたと考えられる.広報については今回活動支援班が担当したが,独立して現地コーディネーターや災害対策本部各班からの情報を収集し,刻々と変化する被災地の状況とそれらに対して県士会がどう活動しどれだけのボランティアを必要としているのかを,インターネットを最大限に活用してリアルタイムに発信する必要があった.これらにより,各都道府県士会において有事の際の対策本部組織編成と業務分掌について明らかにしておく必要があると思われる.また,住民支援活動においては現地コーディネーターの存在が非常に重要であった.コーディネーターは日常的に中核病院・保健師・ケアマネージャー・介護保険サービス事業所などと協業し,地域特性を熟知していることが必要不可欠であるが,今回はコーディネーターを担える理学療法士は少なかった.平時の医療・保健福祉の連携の充実度が災害時の支援体制構築に大きく影響するため,それぞれの分野に関わることのできる我々がつなぎ役となり,日常的にリハビリテーションを通じて地域作りに貢献することが必要である.また,今回はコーディネーターが被災状況の把握・リハビリテーションニーズの調査・他職種との連携・派遣ボランティアの応接など多岐に渡る業務をほぼ1人で行わなければならなかった.今後は各地域に調整員の配置が望まれる.【理学療法学研究としての意義】 有事における対策本部組織編成を綿密に検討する必要性と地域において理学療法士が中心となってネットワークを構築することの重要性が示唆された.