著者
黒瀬 聖子
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.89-103, 2017

ピエール・セレゾールは、1879年にスイスに生まれ、2つの大戦の時代に、スイスに於いて、真の平和を追い求め続けた「平和主義者」である。第1次大戦勃発のため、セレゾールは滞在先の神戸から急遽、帰国した。当時のスイスは「永世中立国」ではあったが、軍備も兵役も国民の義務となっていた。セレゾールの「平和運動」の原点は、第1次世界大戦中の1915年に、スイスで初めて「良心的兵役拒否者」が、投獄されたことにあった。彼は、「『良心的兵役拒否者』を罰するのではなく、彼らを代替労働としての『「国際ワークキャンプ』」に従事させよ」と、国に訴え続け、一般の人々には、「良心的軍事税支払い拒否」を訴えた。そして第1次大戦終戦直後の1920年に、セレゾールはフランスのヴェルダン近郊で、世界で初めての「国際ワークキャンプ」を行った。キャンプは成功をおさめ、その後、「SCI(市民奉仕団)」を設立し、スイス国内外で災害の復興支援などの多くのキャンプを行った。キャンプは「国際(多国籍)」を条件とし、国を守る「軍隊」ではなく、全世界の人々のための「市民奉仕団」を構成した。また彼は、キャンプを「良心的兵役拒否者の代替労働の受け皿に」と考え、スイス軍とも良好な関係を保ち、援助も受けた。しかしスイスに於いて、「代替労働」が認められたのは、1991年になってからであった。そして平和構築を目的として始まった「国際ワークキャンプ」は今日、世界中で行われている。