著者
徳地 直子 黒田 幸夫 岩坪 五郎
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.135-144, 1991-03-01
被引用文献数
6

スギ人工林を主とする小集水域試験地において, 鉛直方向の水の流れに沿って降水・林内雨水・土壌水・湧水・渓流水の質的・量的な変動を測定した。森林土壌に7種類の長さをもつパイプを垂直に挿入して低部からの流出水を土壌水として3年間継続的に採取した。冬期季節風の影響で, 降水・林内雨でCl-濃度が上昇した。スペクトル解析によりCl^-濃度の変動の土壌下層への移動が確かめられ, 各層における濃度変動の時間的ずれから求められたCl^-の移動速度は0.15〜0.39cm/dayであった。土壌下層ほどCl^-濃度のやまは低くなり, やまのすそは広がった。Cl^-の移動速度と濃度変動が移動する期間の流出土壌水量より求めた土壌水の平均移動速度は0,28〜1.06cm/dayでCl^-より速かった。Na^+はCl^-とともに林地に供給され, Na^+濃度も表層では季節変動を示したが, 下層では土壌コロイドヘの吸着や溶脱のため季節変動は不明瞭になった。渓流水では, 流出経路の異なる成分が混ざり合うため, 季節変動は不明瞭であった。