著者
宮林 重明 萩野谷 和裕 黒羽根 郁夫
出版者
TOHOKU UNIVERSITY
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

先天性高乳酸血症110例の患者の検討を行い、電子伝達系酵素(ETP)欠損症は約3割を占めた。ETP欠損症の組織特異性の検討のため、培養線維芽細胞(Fibro.)でのETP活性測定包をミトコンドリア(mt.)を分離することなく、digitonin処理する事により確立した。見いだされたETP欠損症は、複合体I(CO I)欠損症11例、複合体IV(CCO)欠損症11例、複数のETP欠損症5例であった。筋組織でCOI欠損が証明された7例全例が臨床的にMELASの症状をとり、筋mt.の免疫ブロットでは特定なサブユニット(SU)の欠損ではなく全体のSUの減少を認めた。特に高分子と低分子のSUの低下が著明であった。11例のうち6例のFibro.でも検討をおこなったがCOI活性は正常であった。Fibro.でCOIの欠損している4例は全身型で、臨床的に、MELASと違い、早期死亡する重症例が多かった。全身型のCCO欠損症3例は臨床的にはLeigh脳症の経過をとり、CCO蛋白の全SUの均一な低下が全組織にみられたが、COI及びCOIIIに対するCRMの低下は認めなかった。重症致死型CCO欠損症の筋mt.ではCCO蛋白のみではなく特にCOIに対するCRMの著明な低下、cyt.hの低下を認め、肝・腎でも同様であった。COIIIの免疫ブロットは筋でのみ低下し、他の組織では正常であった。さらに同患者のFibro.でmt.を電顕的に検索したところ細胞内及び細胞間でCCO活性染色陽性と陰性の混在を認め、細胞内モザイクを示した。同所見は筋組織でも認められた。筋部分CCO欠損症では、3例でCCOのみならずCOIの低下を認めたが、Fibro.では正常であった。これらの例は活性の低下に比例して免疫ブロットでのCRMの低下も認めた。さらに臨床的にMBRRF像をとった2例で、電顕CCO活性染色において活性陽性線維と陰性線維の筋線維毎のモザイクを示した。以上の結果によりCCO活性に細胞毎のモザイクを示す例や、COI欠損症でcyt.b欠損を合併する例などは、mt.DNAの異常が想定された。