著者
岡ノ谷 一夫 黒谷 亨
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1223-1232, 2017-11-01

われわれは,計時行動に関わる新たなモデルを提案する。このモデルは,ラットの後部帯状回・脳梁膨大後部皮質(RSC)浅層の遅延発火性細胞の性質に基づき,単位時間を刻むクロックを必要としない。事象AのN秒後に事象Bが起き,それにより行動Cが起こるとする。行動・生理・解剖実験から,視床から入る知覚事象AがRSC浅層内の神経細胞のカスケード接続による遅延を受け,海馬で想起される事象BがRSC深層に入ること,RSCの神経細胞が試行時間に応じた周期を示すこと,RSCの損傷により計時行動が阻害されることを示した。浅層と深層の活動のANDを取りヘブ学習することで,行動Cが喚起されることを示すのが今後の課題である。