著者
齊藤 真江 林 克己
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.14-23, 2015 (Released:2016-11-25)
参考文献数
12

要 旨本研究の目的は,頭頸部の放射線治療で頻度の高い急性有害事象である放射線皮膚炎に対する,保湿クリーム(リモイス®バリア)の効果を明らかにし,看護支援に役立てることである.方法は,2011年1月~ 2013年9月に頭頸部に放射線治療を実施し(気管孔のある患者,および頸部全体が照射野に入らない喉頭がん以外の症例を除く),研究の同意が得られた患者33名を対象とした.封筒法(封筒に入れた複数のカードの中から患者自身が選択する方法)により保湿クリーム使用群と未使用群に分けた.保湿クリームは治療後と眠前に撫でるように塗布することを患者に指導し,照射時に自覚症状と他覚症状を観察した.皮膚障害の程度は,「症状なし」を「0」,「症状あり」を段階的に「1~6」に点数化し,照射ごとに加算した.さらに,保湿クリーム使用群16名と未使用群17名の皮膚障害の程度を比較し,統計的に分析した.その結果,保湿クリーム使用群は自覚症状,他覚症状ともに出現頻度が低く,出現時期が遅かった.また,両群の線量が進むごとに加算した皮膚障害の程度の点数を照射線量ごとに検定を行った結果,60Gy以上で有意差があった.さらに,保湿クリーム使用による皮膚炎の悪化は認めなかったことにより,放射線皮膚炎に対して保湿クリームは有効であることが分かった.保湿クリームは,放射線皮膚炎の進行を抑制する効果があり,皮膚炎による苦痛の軽減につながった.