著者
齋藤 直機
出版者
北海道情報大学
雑誌
北海道情報大学紀要 (ISSN:09156658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.57-89, 1999-03

TCE(取引コスト経済)分析は、Ronald H. Coase-1991年ノーベル経済学賞受賞-の、「企業本質論」(1937)にそのルーツをもつが、そのTCE分析の操作化と展開に関して多大な貢献を行ってきたOliver E. Williamson-米国Haas School of Business,University of California at Berkeley教授-は、市場と組織の比較制度的経済分析-TCE分析-の展開途上において邂逅した組織の社会分析との間の研究上のさらなる対話に資すべく、当該分析の基礎的前提の開示を、Williamson (1988)において行っている。本稿は、それらの中から前稿(1998b)までにおいて検討済みの内容を除く、1)経済性(economizing;組織目的)、2)行動仮説(機会主義)、3)TCE分析の操作化(a.単純な契約シェマ、b)カンパニータウンの仮説事例)につき、Williamson(1988)とSwedberg(1990)に依拠しつつ、その本質と問題点を追究している。次いで、本稿は、組織の経済分析-TCE分析を基礎的前提とする-に対する、組織の社会分析的視点からの批判とそれらに対する応答と反批判につき、Williamson(1988)とSwedberg(1990)に沿いつつ、検討を加えている。(より具体的には、それらは、1)ピア・グループ、2)機能主義、3)社会基底性と社会ネットワーク・アプローチ、4)ヴィネット分析、5)パワー・アプローチに関するものである。)最後に本稿は、組織の経済分析と社会分析にかかわる協働的研究のさらなる発展を期するWilliamson(1996)の次のような見解の引用を以て、本稿の結びとしている。(なお、組織の経済分析と組織の社会分析に関するテーマに関しては、Saito(1998a(その1),1998b(その2)と併せて、本稿(その3)を以て、一応の完結をみる。) "私は、ジョイント・ベンチャー(協働的研究)が、当事者の一方が他方を放っておけるだけ十分に学び得たとするまでは、持続することを期待するものであり、また、当事者が互いに相提示する矛盾によって引き起こされる進歩こそ、この20世紀の10年間の残る歳月に対して、私が期待することがらでもある。"