著者
齋藤 隆則
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-27, 1984-01-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
23

二つの破壊様式を有する粘弾性モデルを用いて, 高分子材料の破損包絡線を定式化した. 破壊様式の一つは “粘性破壊” といい, 粘性流動による材料の実質上の破損である. 他の様式は “弾性破壊” といい, 蓄積エネルギーによる界面の切り離れである。次いで “二様式のうち与変形速度に対して最小の破壊ひずみを与える様式が実現する” という “最小破壊ひずみ基準” を設けて, 破壊様式間の遷移を調べた. 主な結果は次のとおりである.非橋かけ無定形高分子の粘性流動的変形では, ひずみ速度の全域にわたり粘性破壊である. 橋かけ高分子の粘弾性的変形においては, ある臨界ひずみ速度で粘性破壊から弾性破壊様式への遷移が生じ, しかも橋かけ密度vの増大につれて破損包絡線の形が変化する. また包絡線の最右端における破壊ひずみがv-1/2に比例することを理論的に示し, 何人かの研究者による実験結果との一致を見た. 更に破損包絡線の形と位置を左右する因子について考察した.