著者
ANTHONY Perry
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

我々は、マウスでの遺伝子導入(tg)によるRNA干渉(RNAi)法の開発を試みた。まず、この導入実験として、短い二重鎖RNAによるRNAi(siRNA)実験を未成熟卵(GV)において行い、そのターゲットに対するRNAi効果(遺伝子発現抑制効果)を示した。我々が選んだターゲットは、その遺伝子欠損に由来する表現系が既知であるものから、今回のRNAi実験により新たな表現系が発見されたものまでを含む。RNAiによるターゲットの転写産物の減少度はGV卵1個レベルでの準定量的RT-PCRを実施し確認した。次に、我々はRNAポリメラーゼIII(Pol III)によりショートヘアピン型RNA(shRNA)を転写しsiRNAを産生するベクターを構築した。このshRNAのターゲットは、我々が初期に提案したeGFP、チロシナーゼおよびレプチンとした。これらのshRNA発現ベクターの有効性は、哺乳類培養細胞の遺伝子導入実験によるスクリーニングシステムによって検討した。我々のシステムでは、ターゲット発現ベクターとしてヽターゲットのオープンリーディングフレームの下流にires(mRNA内部のリボゾーム結合サイト)によってレポーター遺伝子である蛍光タンパク質venusを発現させるフレームを挿入したバイシストロン性発現ベクターを用いた。このベクダーでは、1種類のmRNAから2つのオープンリーディングフレームが翻訳される。したがって、これをshRNA発現ベクターと共に培養細胞に導入した場合、その蛍光タンパク消失の有無を観察することでターゲットに対するRNAi効果を検出することができる。我々は、このスクリーニング法により候補shRNAから効果の高いshRNAを選択し、各トランスジェニックマウス系統の作出に用いた。本スクリーニングシステムはRNAポリメラーゼII (pol II)による次世代RNAiベクターの開発にも使用している。