著者
浅見 裕 ASAMI Yutaka
出版者
岩手大学教育学部附属教育工学センター
雑誌
教育工学研究 (ISSN:02852128)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.55-66, 1986-03-01

「教育技術の法則化運動」では,教師の力量を高めることを目的としており,共鳴する教師も多い。体育科教育学においても,教育技術の確立は重要な課題である。学部教育において,小学校教員養成課程学生対象の授業を行っている筆者としても,体育授業について学生たちの指導力養成を果たさねばならないが,体育実技については苦手・嫌いの学生も多く存在しており,指導力養成には非常な努力を強いられている。水泳の授業では,できないと思われている「バタフライ」を取り上げ,誰もが泳げるようになることを目指して指導している。この実践を踏まえて,誰もが教えることのできるバタフライの指導方法の確立を目的として,指導の順序と指導者の発言内容を示した。特に「バ夕足」ではなく,「旗(はた)足」という新造語を使って,無駄な力を使わない泳ぎの習得を目指しての指導方法を提言した。この指導方法を使っても,直ちに誰もがどの子どもをも泳がせるのは難しい。学習者一人ひとりに対応できるかどうかという教師の指導力によって左右されるのである。体育についても,「教育技術の法則化運動」は未だ,一人ひとりの子どもに対応できるような教育技術を数多く確立しているとは言えない。現在までの「教育技術の法則化運動」には,「つまずきの原因を見抜く力量の必要性の検討が不足」・「すぐに役立つという表現が曖昧」・「定石についての考え方に異論あり」などの問題点があることを述べた。今後これらの問題について検討を深めることは教員養成の仕事にも関わり,筆者の今後の課題でもある。