著者
Tao W.-K. Lang S. Simpson J. Olson W.S. Johnson D. Ferrier B. Kummerow C. Adler R.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.333-355, 2000-08-25
被引用文献数
4

TOGA COARE集中観測中の3つの対流活動の活発な期間(1992年12月10-17日、1992年12月19-27日、1993年2月9-13日)の潜熱加熱鉛直分布をGoddard Cumulus Ensemble (GCE) Modelの2次元バージョンを用いて調査するとともに、Goddard Convective and Stratiform Heating (CSH)アルゴリズムを用いて推定した。CHSアルゴリズムに入力した降雨に関するデータソースはSSM/I、観測船レーダ、GCEモデルである。6時間ごとのゾンデデータを用いて診断的に求めた潜熱加熱鉛直分布を検証データとして用いた。GCEモデルを用いて計算した降雨強度及び潜熱加熱鉛直分布はゾンデ観測から見積もられた値と良い一致を示した。典型的な対流性及び層状性加熱構造(形態)はGCEモデルで良く再現されていた。レーダで観測した降雨強度は12月の両期間についてはGCEモデルやSSM/Iから見積もった値よりも小さくなった。SSM/Iから求めた降雨強度は12月19-27日と2月9-13日についてはGCEモデルより大きな値となったが、12月10-17日についてはGCEモデルと良い一致を示した。GCEモデルで見積もった層状性降水の割合は12月19-27日が50%、12月11-17日が42%、2月9-13日が56%であった。これらの結果は大規模場の解析と矛盾しない値であった。精度の良い潜熱加熱のリトリーバルのためには層状性降水の割合の正確な見積もりが必要である。層状性降水の割合が高く(低く)なると最大加熱率がより高(低)高度に出現する。GCEモデルは三つの期間について常にレーダよりも層状性降水の割合を10-20%高く計算した。SSM/Iから求めた層状性降水の割合は12月19-27日が38%、12月11-17日が48%、2月9-13日が41%であった。GCEモデルまたはレーダから見積もった降水強度と層状性降水の割合を用いてCHSアルゴリズムで推定した潜熱加熱の鉛直分布の時間変化は、三つの期間について診断的に計算した結果と良い一致を示した。しかし、レーダから見積もられた降雨強度や層状性降水の割合が小さめであったために、診断的に計算された結果と比べると潜熱加熱量を減少評価し、最大潜熱加熱高度を低く目に推定した。SSM/Iの降雨に関する情報は時間解像度が低いために、ここの対流活動を推定することはできない。しかし本研究は対流活動に関するSSM/Iによる良い降雨強度のリトリーバルは良い潜熱加熱のリトリーバルにつながることを示唆した。感度実験の結果は、SSM/Iから求めた12月19-27日の時間平均した層状性降水の割合は過少評価されるとを示した。しかし、12月10-17日については、SSM/Iから求めた時間平均した層状性降水の割合はゾンデ観測から得られた結果とそれほど矛盾しない値であった。観測結果にバイアスがなければ、長期間の加熱量を求めるリトリーバルはより精度の高いものとなると思われる。CHSのlook-up tableから適切な潜熱加熱鉛直分布を選択することが重要である。この問題を取り扱った感度実験も実施した。