著者
B. G. Hunt
出版者
(公社)日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.309-318, 1982 (Released:2007-10-19)
参考文献数
7
被引用文献数
20

年平均状態を求める半球大循環モデルを用いて,黄道傾斜が,23.5°から0°,65°に変化することによって生じた結果を考察した。この様な傾斜の値が,過去の地質時代にとられていたといわれている。傾斜0°の気候は,現在の気候より変化に富み,高緯度の地表面は,より寒冷で,乾燥している。しかし,モデル対流圏は,全体的にやや温暖化している。傾斜65°に対し実験を2例行なった。2例とも高緯度で低アルベードだが,一方は低緯度で氷河のアルベードを与えた。年平均状態に対し,最初の実験例では,対流圏の緯度方向の温度傾度が実質上無かった。第2の実験例では赤道で地表温度が最低となったが,氷河状態になる程の低温に到らなかった。この場合は「反転したハドレー細胞」によって,熱帯東風ジェットが維持された。シミュレートされた水文学,エネルギー交換等を合わせて考慮すれば,ここで得られた結果はこの様に極端な傾斜における気候状態を考える材料を与えてくれる。地球の居住可能帯は,傾斜0°,65°双方に対して,減少すると結論される。以上の実験例は,色々提唱される仮説的気候状態を評価する上で,大気大循環モデルは,かなりの未開拓な可能性を持っていることを示している。