著者
北島 勉 野山 修 加藤 誠久 CHADBUNCHACHAI Witaya CHAIPAH Weerasak CHUAYNA Nonglak
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.377-386, 2001

発展途上国では,交通事故等による外傷が増加しており,救急搬送システムを構築することへの必要性が高まっている。本研究では,タイ王国の一地方都市であるKhon Kaen市(コンケン市)での救急搬送システム構築に関する先駆的な取り組みを分析し,タイ及び発展途上国における救急搬送システムのあり方を検討した。コンケン市では,コンケン病院が中心となり,コンケン大学病院,ボランティア団体,警察署,教育機関が連携をとりながら人材育成,通報手段の整備,搬送サービスの提供を行っていた。しかし,コンケン病院の救急隊とボランティア団体の救急隊との間には患者へのケアにおいて格差が認められた。様々な部門と協力しながら救急搬送システムを構築していくことは,多くの発展途上国にとって現実的な方法であるが,システムを更に発展させていくためには,研修や情報システムの整備等により,サービス提供者間のサービスの質の格差を是正する必要があると考える。